あな痔(痔瘻)
あな痔(痔瘻)
痔瘻(じろう、あな痔)は、肛門の内側と外側が膿の通り道でつながったまま残った状態です。多くは、肛門のまわりに膿がたまる肛門周囲膿瘍のあとにできます。いぼ痔や切れ痔と違い、薬で治ることはまれとされており、根本的な治療には手術が必要になります。
要点
痔瘻とは 肛門の中の小さなくぼみから細菌が入って化膿し、膿が出たあとに管(瘻管)が残った状態
主な症状 肛門のまわりのしこり、膿や分泌物で下着が汚れる、かゆみ。炎症が治まっている時期は痛みが強くないこともある
治療 自然に治ることはまれとされ、基本は手術。瘻管を開く方法や切除する方法などがある
受診 膿が出る、しこりが続く、腫れと痛みを繰り返す場合は、市販薬で様子を見ずに一度ご相談ください
肛門の少し内側には、肛門のくぼみ(肛門陰窩)と、その奥に粘液を出す肛門腺があります。ここに便の中の細菌が入り込んで化膿すると、肛門のまわりに膿がたまります。これが肛門周囲膿瘍です。膿が自然に出た場合も、医療機関で切開して出した場合も、膿の通り道が管やしこりとなって残ることがあり、この状態を痔瘻と呼びます(日本大腸肛門病学会)。
細菌の入口となった穴を原発口、感染が続くもとになる部分を原発巣、膿が出てくる皮膚側の開口部を二次口といいます。皮膚に開口部をもたない痔瘻も少なくありません。

痔瘻は、管が肛門の筋肉に対してどの深さを通るかによって分けられます。国内で広く使われているのが、1972年に発表された隅越分類です。管が浅いか深いかによって、選ばれる手術の方法や、どの施設で治療を受けるかの判断が変わるため、診断ではこの深さの見きわめが重要になります。

| 型 | 瘻管の走り方 | 特徴 |
|---|---|---|
| Ⅰ型 | 肛門をしめる筋肉(肛門括約筋)を貫かない | 皮膚の下や粘膜の下にとどまる、もっとも浅いタイプ |
| Ⅱ型 | 内側と外側の括約筋のあいだを通る | もっとも多いタイプ。日本大腸肛門病学会の解説では、痔瘻の8割ほどが浅い位置を通る低位筋間痔瘻とされています |
| Ⅲ型 | 肛門挙筋より下に広がる | 坐骨直腸窩という深い空間に及ぶタイプ。片側だけのものと両側に及ぶものがあります |
| Ⅳ型 | 肛門挙筋より上に及ぶ | 骨盤の深い部分まで達するタイプで、頻度は高くありません |
それぞれの型には、位置が高いか低いか、管が1本で単純か枝分かれして複雑かといった情報が付け加えられます。枝分かれのある複雑なタイプや、Ⅲ型・Ⅳ型のような深いタイプでは、手術の難しさや肛門の機能への影響が変わるため、治療の進め方も変わります。
痔瘻は、肛門周囲膿瘍のような激しい痛みが落ち着いたあとに気づかれることが多い病気です。炎症が治まっている時期は痛みが強くないことがあり、次のような変化が手がかりになります。
肛門のまわりに、押すと動くようなしこりを触れる
膿や血の混じった分泌物が出て、下着が汚れる
肛門のまわりがかゆい、じくじくする
腫れと痛みが出たり治まったりを繰り返す
痔瘻が再び化膿して肛門周囲膿瘍になり、強く痛むこともあります。腫れが引いて痛みがなくなっても、管そのものが残っていれば治ったわけではない点に注意が必要です。おしりのできものについてはおしりにできものでもまとめています。
肛門のまわりの腫れは、毛穴や皮脂腺の感染(いわゆるおでき、粉瘤の化膿など)でも起こります。見た目だけで区別するのは難しく、痔瘻かどうかは、肛門の内側に原発口があるかどうかで判断されます。繰り返す、膿が続く、同じ場所が腫れるといった場合は、自己判断せず診察を受けることをおすすめします。
もっとも多い原因は、肛門のくぼみから肛門腺に細菌が入って化膿することです。下痢が続くと、ふだんは便が入り込まないくぼみに細菌が入りやすくなるとされています。肛門周囲膿瘍のすべてが痔瘻になるわけではありませんが、一定の割合で痔瘻が残ります。

急な腫れと強い痛みが出ている段階については、肛門周囲膿瘍の症状と切開排膿で詳しく解説しています。
痔瘻の自然治癒はまれで、基本的には手術が行われます(日本大腸肛門病学会)。抗菌薬は炎症が強い時期に使われることがありますが、これは腫れや痛みを抑えるための治療であり、残っている管そのものがなくなるわけではありません。
市販の痔の薬は、いぼ痔や切れ痔の症状をやわらげる目的でつくられており、痔瘻の管を治すことは想定されていません。膿が出なくなって治ったように見えても、管が残っていれば再び化膿することがあります。
症状が落ち着いても受診をおすすめする理由
痛みや腫れが引いた時期は、管の位置や深さを確認しやすい時期でもあります。腫れているときだけ受診して、治まると通院をやめてしまうと、治療の機会を逃すことがあります。
手術では、細菌の入口である原発口と原発巣を確実に処理することと、肛門をしめる筋肉(肛門括約筋)への影響を最小限にすることの両立が目標になります。管の深さや広がり、つまり上に述べた隅越分類のどの型にあたるかによって、選ばれる方法が変わります。
瘻管を開く方法(開放術) 管を切り開いて治す方法です。浅い位置を通る痔瘻で選ばれることがあります。
瘻管をくり抜く方法(くり抜き法) 管を周囲からくり抜いて取り除く方法で、筋肉を残しやすいとされています。
シートン法 管に医療用のゴムなどを通し、時間をかけて処理する方法です。深いタイプなどで選ばれることがあります。
日本大腸肛門病学会の診療ガイドラインでも、浅いタイプと深いタイプで術式の考え方が分けて整理されています。手術によって肛門の機能に影響が出る可能性がある複雑な痔瘻については、専門施設での治療がすすめられています。
痔瘻の根治手術は、日帰りで行っている施設と、入院で行っている施設があります。どちらを選ぶかは、痔瘻のタイプと、施設ごとの体制や考え方によって変わります。当院では、痔瘻については入院での根治手術をおすすめしています。次の3点を優先したいと考えているためです。
1. 麻酔と術後の安静に、時間のゆとりをもたせたい 原発巣がどの深さにあるかを確認しながら処理するには、肛門をしめる筋肉(肛門括約筋)を十分にゆるめられる麻酔が必要です。入院であれば、麻酔から回復するまでの安静と経過観察の時間を、その日の予定に左右されずに確保できます。
2. 手術の範囲を、痔瘻の形に合わせて決めたい 瘻管が深い場合や枝分かれしている場合、切除する範囲は大きく、傷も深くなります。原発巣を残せば再発につながるため、範囲を縮めずに手術を組み立てられる条件を整えておきたいと考えています。
3. 手術直後の数日を、医療者の管理下に置きたい 痔瘻の手術後は、痛みの調整、出血の確認、排便のコントロールが必要になります。日本大腸肛門病学会の解説でも、手術のあとに排便や食事の制限が必要になる場合には入院手術が必要とされています。入院中はこれらを医療者が管理でき、ご自身で判断していただく場面が少なくなります。
上に述べた隅越分類でいえば、Ⅲ型・Ⅳ型のような深いタイプや、枝分かれのある複雑なタイプでは、この3点の差がとくに大きくなります。同学会の解説でも、坐骨直腸窩痔瘻のように形が複雑で切除する範囲が大きくなる場合には、日帰りではなく入院での手術が必要になるとされています。
入院期間は術式やお体の状態によって変わるため、一律の日数をお伝えすることはできません。当院では診察と診断を行い、手術が必要と判断した場合には、入院での治療が可能な連携医療機関をご紹介しています。仕事の都合などで入院が難しい場合も、まずはご相談ください。
肛門周囲膿瘍の切開排膿も、痔瘻の根治手術も、公的医療保険の対象です。窓口でのお支払いは医療費の1〜3割となります。金額は術式と入院の有無で変わり、日帰りと入院では入院費の分だけ差が出ます。実際の負担額は診察時にご説明します。
肛門周囲膿瘍を繰り返す可能性があります。また、非常にまれではありますが、長期間経過した痔瘻からがんが生じること(痔瘻がん)が知られています。詳しくは肛門管がん・痔瘻がんをご覧ください。
早めの受診をおすすめする症状
肛門のまわりから膿が出る、下着が汚れる状態が続いている
同じ場所の腫れと痛みを繰り返している
肛門のまわりにしこりを触れる
強い痛みと発熱がある場合は、当日から翌日のうちにご相談ください。
当院は消化器内科・肛門科を標榜しており、日本大腸肛門病学会認定 大腸肛門病専門医が診察します。診察は15歳以上の方を対象としています(乳児の痔瘻は経過や治療方針が異なるため、小児科・小児外科へのご相談をおすすめします)。
痔瘻は男性に多いとされていますが、女性も発症します。おしりの診察に抵抗があって受診が遅れる方は少なくありません。当院では毎週火曜日に女性医師が肛門科の診察を担当しています。詳しくは女性医師による肛門科外来をご覧ください。
おなかとおしりのクリニック 東京大塚 JR大塚駅南口より徒歩1分 TEL 03-6912-5995
診察のなかでいただくことの多いご質問をまとめました。
痔瘻の自然治癒はまれとされており、基本的には手術が行われます。膿が出なくなって症状が落ち着いても、管が残っていれば再び化膿することがあります。
抗菌薬は炎症が強い時期に使われることがありますが、残っている管そのものをなくす治療ではありません。市販の痔の薬も、いぼ痔や切れ痔の症状をやわらげる目的のもので、痔瘻の管を治すことは想定されていません。
見た目だけで区別するのは難しく、肛門の内側から外側に続く道(瘻管)があるかどうかで判断されます。同じ場所の腫れを繰り返す、膿が続くといった場合は診察をおすすめします。
当院では、痔瘻については入院での根治手術をおすすめしています。麻酔で肛門の筋肉を十分にゆるめた状態で原発口と原発巣を確実に処理でき、術後の痛みや排便の管理も医療者が行えるためです。手術が必要と判断した場合は、連携医療機関をご紹介しています。
肛門周囲膿瘍の切開排膿も痔瘻の根治手術も公的医療保険の対象で、窓口でのお支払いは医療費の1〜3割です。術式や入院の有無で金額が変わるため、診察時にご説明します。
肛門科、または大腸肛門外科です。原発口の位置を確認したうえで治療方針を決める必要があるため、肛門の診療を専門とする医療機関での診察をおすすめします。
肛門周囲膿瘍が再発する可能性があります。また非常にまれですが、長期間経過した痔瘻からがんが生じることが知られています。
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