2026年9月15日
血便が出た、便秘と下痢を繰り返す、便が細くなった気がする。こうした変化に気づいたとき、大腸がんではないかと不安になる方は少なくありません。しかし大腸がんの症状には、早期にはほとんど現れないという厄介な特徴があります。この記事では、大腸がんで実際に多い症状と、それぞれの症状で受診を考える目安を、大腸癌研究会「患者さんのための大腸癌治療ガイドライン」編集委員を務める日本消化器内視鏡学会認定専門医が解説します。
この記事の結論
大腸がんは、早期の段階では自覚症状がほとんどありません。症状として多いのは、血便・下血、便秘と下痢を繰り返す便通の変化、便が細くなる、残便感、原因のはっきりしない貧血や体重減少です。
ただし、これらは主にがんが進行してから現れるサインです。症状の有無で大腸がんがあるかどうかを判断することはできません。だからこそ、症状が出る前に便潜血検査や大腸カメラで調べておくことに意味があります。
大腸がんは早期にはほとんど症状が出ません
「大腸がんの初期症状を知っておきたい」と考えて調べる方は多いのですが、早期の大腸がんに特有といえる初期症状は、現時点では知られていません。
大腸がんは大腸の粘膜から発生し、はじめは粘膜の表面にとどまっています。この段階では腸の通り道が狭くなることも、大きく出血することもないため、痛みや便の異常を起こしにくいと考えられています。とくに大腸の右側(盲腸・上行結腸)は便がまだ液状で通過しやすく、がんがかなり大きくなるまで症状が出ないことがあります。
そのため「お腹の調子はいいから大丈夫」という自己判断は、大腸がんに関しては必ずしも安心の根拠になりません。症状を待たずに検査を受けることが、早期発見につながると考えられています。
大腸がんで多い症状は?進行してから現れる5つのサイン
がんが大きくなると、腸の内側が狭くなったり、表面から出血したりすることで、次のような変化が現れることがあります。いずれも大腸がんだけに起こるものではありませんが、続く場合は一度調べておきたいサインです。

血便・下血
便に赤い血が混じる、便の表面に血が付く、便器やトイレットペーパーが赤くなる、といった変化です。大腸がんの症状としてよく知られているものです。痔と思い込んで様子を見てしまうケースが多く、注意が必要です。詳しくは「血便・下血が出たら」もあわせてご覧ください。
出血する場所によって血液の色は変わります。肛門に近い直腸やS状結腸からの出血は鮮やかな赤色になりやすく、大腸の奥(右側)からの出血は便と混ざって暗赤色になることがあります。なお、海苔の佃煮のような真っ黒でドロッとした便(タール便・黒色便)は、大腸よりも胃や十二指腸といった上部消化管からの出血をまず疑う所見です(黒い便が出たときの解説はこちら)。いずれの色であっても、自己判断せず受診してください。
便秘と下痢を繰り返す
がんで腸が狭くなると、便がたまって便秘になり、その後に液状の便がすり抜けて下痢になる、という波が起こることがあります。思い当たる原因がないのに、こうした便通の変化が数週間以上続くときは受診をおすすめします(便秘が続く/下痢が続く)。
大腸の壁の構造と、がんが進む方向
大腸の壁は4つの層が重なってできています。がんはいちばん内側の粘膜から始まり、下の層へ向かって進んでいきます。どこまで進んでいるかによって、治療の方法が変わります。

深さだけで治療が決まるわけではありません。がんは壁の外のリンパ節にも転移することがあり、壁の浅い段階であっても、リンパ節への転移があれば内視鏡での切除だけでは足りず、手術などの追加治療が検討されます。どこまで調べる必要があるかは、内視鏡での観察に加えてCTなどの検査で確認していきます。
負担の少ない治療で済む可能性が高いのは、いちばん上の浅い段階です。ただし、この段階では自覚症状がほとんど出ません。症状を待ってから受診すると、より深い段階で見つかりやすくなります。
大腸がんで多い症状は?進行してから現れる5つのサイン
がんが大きくなると、腸の内側が狭くなったり、表面から出血したりすることで、次のような変化が現れることがあります。いずれも大腸がんだけに起こるものではありませんが、続く場合は一度調べておきたいサインです。

気になる項目はありますか
当てはまるものが続いている場合の目安です。数の多さで大腸がんの可能性が決まるわけではありません。
それぞれの症状について、次から順に解説します。気になる項目が続いているときは、大腸内視鏡検査でのご相談をご検討ください。
血便・下血
便に赤い血が混じる、便の表面に血が付く、便器やトイレットペーパーが赤くなる、といった変化です。大腸がんの症状としてよく知られているものです。痔と思い込んで様子を見てしまうケースが多く、注意が必要です。詳しくは「血便・下血が出たら」もあわせてご覧ください。
出血する場所によって血液の色は変わります。肛門に近い直腸やS状結腸からの出血は鮮やかな赤色になりやすく、大腸の奥(右側)からの出血は便と混ざって暗赤色になることがあります。なお、海苔の佃煮のような真っ黒でドロッとした便(タール便・黒色便)は、大腸よりも胃や十二指腸といった上部消化管からの出血をまず疑う所見です(黒い便が出たときの解説はこちら)。いずれの色であっても、自己判断せず受診してください。
便秘と下痢を繰り返す
がんで腸が狭くなると、便がたまって便秘になり、その後に液状の便がすり抜けて下痢になる、という波が起こることがあります。思い当たる原因がないのに、こうした便通の変化が数週間以上続くときは受診をおすすめします(便秘が続く/下痢が続く)。
便が細くなる・残便感が残る
狭くなった腸を通るため、便が鉛筆のように細くなることがあります。また、排便してもすっきりしない残便感が続くこともあります。直腸やS状結腸のがんで起こりやすいとされています。
貧血・立ちくらみ
がんの表面からごく少量の出血が続くと、本人が気づかないうちに貧血が進むことがあります。健診で貧血を指摘された、階段で息切れするようになった、といったことがきっかけで大腸がんが見つかる方もいます。
お腹の張り・体重減少
腹部の張りや痛み、食欲の低下、ダイエットをしていないのに体重が減る、といった変化が現れることもあります。腸の通り道がふさがると腸閉塞となり、緊急の治療が必要になる場合もあります。
症状がなくても見つかる:便潜血検査という入り口
大腸がんが見つかるきっかけは、自覚症状だけではありません。なかでも、40歳以上を対象に年1回行われる便潜血検査は、目に見えない微量の出血を調べ、症状が出る前の段階を拾い上げられる検査です。日本対がん協会によると、便潜血検査が陽性となった方のうち3〜5%で大腸がんが発見されるとされています。
便潜血陽性は「要精密検査」を意味します。痔をお持ちの方でも、その出血が痔によるものかどうかを確かめるには、大腸カメラで大腸の内部を確認する必要があります。陽性を指摘されたら、必ず精密検査をお受けください。豊島区の大腸がん検診にも対応しています(豊島区のがん検診について)。
症状が出てから見つかると手遅れですか
症状が出てから見つかった大腸がんが、すべて手遅れというわけではありません。国立がん研究センターのがん統計によると、大腸がんの5年相対生存率は69.9%(2018年診断例)と報告されています。
重要なのは、早く見つかるほど治療の選択肢が広がるという点です。がんが粘膜や粘膜下層の浅い部分にとどまっていれば、お腹を切らずに内視鏡で切除できる可能性があります。一方、壁の深い層やリンパ節に及んでいる場合は、手術や薬物療法が必要になることが一般的です。同じ大腸がんでも、見つかる時期によって体への負担は変わってきます。ステージや治療法の詳細は大腸がんの疾患ページで解説しています。
症状が気になるときに行う検査 ― 大腸内視鏡検査
大腸の内部を直接観察して調べる検査が、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)です。当院ではAIによる病変検出支援システムを併用しています(AI搭載大腸カメラについて)。肛門からスコープを入れて大腸全体を直接観察し、疑わしい部分があればその場で組織を採取して確定診断につなげます。

検査中に大腸ポリープが見つかった場合、多くはその場で日帰り切除が可能で、将来の大腸がんを予防することにつながると考えられています。ただし、サイズが大きいポリープや形状によっては入院での治療が必要となるため、その場合は連携する入院施設のある病院へご紹介しています。
当院では鎮静剤を使用し、うとうとと眠っている間に検査を終えられる体制を整えています。以前の検査がつらかった方は内視鏡検査が苦手な方へ、女性医師をご希望の方は女性医師による内視鏡検査もご覧ください。血便や便通の変化が気になる方、便潜血で陽性を指摘された方、40歳以上で一度も大腸カメラを受けたことがない方は、どうぞご相談ください。
大腸がんの症状についてよくあるご質問
大腸がんで一番多い症状は何ですか?
血便・下血がよく知られています。ただし、これは進行してから現れることが多い症状で、早期の大腸がんではほとんど症状が出ません。症状がないことは、大腸がんがないことの裏づけにはなりません。
痔の出血と大腸がんの血便は見分けられますか?
見た目や出方から、ご自身で見分けることは困難です。痔があっても、その奥に大腸がんが隠れていることがあります。血便はいずれの場合も一度医療機関でご相談ください。大量に出血している、めまいやふらつきを伴うといった場合は当日の受診を、それ以外でも早めの受診をおすすめします。
症状がなければ大腸カメラは受けなくてよいですか?
症状がない段階で見つけられるところに、この検査の意味があります。40歳以上の方、血縁者に大腸がんや大腸ポリープの方がいる方は、症状がなくても一度お受けになることをおすすめします。
若くても大腸がんになりますか?
大腸がんは年齢とともに増えますが、40歳未満で見つかる方もいらっしゃいます。年齢だけを理由に「まだ関係ない」と判断せず、血便や便通の変化が続くときはご相談ください。
本記事は執筆者個人の見解に基づくものであり、大腸癌研究会および同ガイドラインの公式見解を示すものではありません。
【参考】国立がん研究センター がん情報サービス「がん統計」大腸(2026年7月22日更新)/公益財団法人 日本対がん協会「大腸がんの基礎知識」

記事監修:豊島区 おなかとおしりのクリニック 東京大塚
院長 端山 軍(MD, PhD Tamuro Hayama)
資格:日本消化器病学会 専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会 スクリーニング医・専門医・指導医
日本大腸肛門病学会 専門医・指導医・評議員
日本外科学会 専門医・指導医
日本消化器外科学会 専門医・指導医
がん治療認定医
消化器がん治療認定医
帝京大学医学部外科学講座非常勤講師
元帝京大学医学部外科学講座准教授
医学博士 など
院長プロフィール