2026年8月13日
熱中症と脱水症状は症状が重なる部分が多く、自己判断が難しい体調不良です。日本救急医学会の熱中症診療ガイドラインでは、症状の重さをI度からIV度までの4段階で分類しており、めまいや立ちくらみ程度のI度は現場での対処が可能ですが、頭痛や嘔吐が出るII度以上は速やかな医療機関受診が必要とされています。本記事では、重症度ごとの症状の見分け方と、今すぐ受診すべきサインを解説します。
熱中症の症状とは?重症度で対応が変わります
熱中症は、暑熱環境にいる、またはいた後に起こる体調不良の総称です。日本救急医学会は2015年に重症度をI〜III度の3段階に分類するガイドラインを公表し、2024年の改訂では最重症群を「IV度」として新たに区分しました。症状だけで重症度をある程度判断できますが、示されている症状はあくまで典型例であり、これらがなければ軽症と決めつけられるものではない点に注意が必要です。
I度:現場での対処が可能な状態
めまい、立ちくらみ(失神)、生あくび、大量の発汗、強い口の渇き、筋肉痛、筋肉のこむら返りが主な症状です。涼しい場所へ移動し、水分・塩分を補給することで対処できます。
II度:速やかな医療機関受診が必要な状態
頭痛、嘔吐、強い倦怠感、虚脱感が現れた状態です。従来「熱疲労」と呼ばれていた段階にあたり、自己判断で様子を見ず、早めに医療機関を受診してください。
III度:入院が必要な状態
意識障害、肝機能・腎機能障害、血液凝固異常など、臓器に障害が及んでいる状態です。採血による評価と、医療者の判断による入院が必要になります。
IV度:集中治療が必要な最重症群(2024年新設)
深部体温40.0℃以上かつ意識レベルの著しい低下(GCS8以下)を伴う最重症の状態です。2024年のガイドライン改訂で新たに区分され、体を積極的に冷やす処置を含む集中治療が必要とされています。
脱水症状のサイン
脱水症状は熱中症の初期段階と症状が重なりますが、体内の水分・塩分が失われることそのものに焦点を当てた状態です。以下のサインが見られたら、水分・塩分補給のタイミングです。
- 強い口の渇き
- 尿量の減少、尿の色が濃くなる
- 皮膚や唇の乾燥
- めまい、立ちくらみ
- 倦怠感、集中力の低下
今すぐ受診が必要な症状
以下の症状はII度以上に該当する可能性があり、自己判断で様子を見るのではなく医療機関の受診が必要です。
- 頭痛や嘔吐が続く
- 強い倦怠感で日常動作が困難
- 呼びかけへの反応が鈍い、会話がかみ合わない
- けいれんがある
- 自力で水分を摂取できない
これらのうち、意識障害やけいれんはIII度・IV度が疑われる緊急性の高い症状です。ためらわず救急要請してください。
自宅でできる対処法(I度の場合)
I度の症状であれば、以下の対処で回復が見込めます。
- 涼しい場所(冷房の効いた室内や日陰)に移動する
- 手のひら・足の裏・頬を冷やす。この部位には動静脈吻合(AVA)という血管が集まっており、毛細血管の約1万倍の血流量で熱を効率よく運び出せます。保冷剤や冷水を使い、冷たすぎない心地よい温度で行うのがポイントです(冷たすぎるとAVAが閉じて逆効果になります)
- 塩分を含んだ水分(経口補水液やスポーツドリンク)を補給する
- 症状が改善しない、または悪化する場合は速やかに医療機関を受診する

頭痛や嘔吐などII度以上が疑われる症状がある場合は、手のひら冷却に加えて首・脇の下・太ももの付け根など太い血管が通る部位を冷やし、急いで医療機関を受診してください。皮膚のすぐ下を通る太い血管を冷やすことで、体温を急速に下げる効果が期待できます。
水・経口補水液・スポーツドリンクの使い分けについては、熱中症対策の飲み物の選び方で詳しく解説しています。
よくある質問
熱中症の初期症状(I度)にはどのようなものがありますか?
めまい、立ちくらみ、大量の発汗、筋肉のこむら返りなどが代表的です。意識がはっきりしていれば、涼しい場所への移動と水分・塩分補給で現場対処が可能とされています。少しでも意識がおかしい、または改善しない場合はII度以上とみなし受診してください。
脱水症状のサインにはどのようなものがありますか?
強い口の渇き、尿量の減少、皮膚や粘膜の乾燥、めまい、倦怠感が主なサインです。これらは熱中症の初期症状と重なる部分があります。
熱中症で今すぐ病院を受診すべき症状はどれですか?
頭痛、嘔吐、強い倦怠感、虚脱感が現れた場合はII度に該当し、速やかな医療機関受診が必要です。意識障害やけいれんがある場合はためらわず救急要請してください。
熱中症の症状は何日くらいで治りますか?
軽症(I度)であれば当日中から翌日には回復することが多いとされます。II度以上や高齢者・持病がある方は数日以上かかることがあり、症状が長引く場合は再受診が必要です。
体を冷やすなら、手のひらと首・脇の下、どちらが効果的ですか?
予防や軽症時には、動静脈吻合(AVA)がある手のひら・足の裏・頬を心地よい温度で冷やす方法が効率的とされています。頭痛や嘔吐などII度以上が疑われる場合は、首・脇の下・太ももの付け根といった太い血管が通る部位を冷やし、急いで医療機関を受診してください。
まとめ:症状に応じた正しい対処を
熱中症は軽度のうちに正しく対処すれば、多くの場合は自宅で回復が見込めます。一方で、頭痛や嘔吐、意識障害などII度以上の症状がある場合は、自己判断で様子を見ず速やかに医療機関を受診してください。
日頃からの水分・塩分補給も熱中症予防の基本です。水・経口補水液・スポーツドリンクの正しい使い分けは、熱中症対策の飲み物の選び方|水・OS-1・ポカリの違いを医師が解説で詳しく解説しています。
出典:日本救急医学会「熱中症診療ガイドライン2015」「熱中症診療ガイドライン2024」

記事監修:豊島区 おなかとおしりのクリニック 東京大塚
院長 端山 軍(MD, PhD Tamuro Hayama)
資格:日本消化器病学会専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
日本大腸肛門病学会専門医・指導医・評議員
日本外科学会専門医・指導医
日本消化器外科学会専門医・指導医
がん治療認定医
消化器がん治療認定医
帝京大学医学部外科学講座非常勤講師
元帝京大学医学部外科学講座准教授
医学博士 など
院長プロフィール