2026年9月21日
フルミストとは
フルミストは、注射ではなく鼻の中にスプレーで噴霧するタイプのインフルエンザワクチンです。国内で承認されている対象は2歳以上19歳未満の方で、接種回数は1回です。針を使わないため接種時の痛みがほとんどない一方、弱毒化した生きたウイルスを使うワクチンであることから、喘息のある方や免疫の働きが低下している方など、接種を避けたほうがよい方がいます。
「毎年の注射がつらくて、予防接種をためらってしまう」。お子さまや保護者の方から、毎年このようなご相談をいただきます。その選択肢のひとつが、鼻から接種する経鼻インフルエンザワクチン「フルミスト」です。
ただ、インターネットで調べると「危険」「デメリット」といった言葉も目に入り、かえって迷ってしまう方も少なくありません。このページでは、フルミストの効果と注意点を、添付文書に記載された国内の試験データをもとに整理してお伝えします。当院では毎年、インフルエンザ予防接種を行っています。
フルミストとは?
フルミストは、第一三共株式会社が販売する経鼻タイプのインフルエンザワクチン(製品名:フルミスト点鼻液)です。海外では以前から使われてきましたが、日本では2024/25シーズンから一般の医療機関で接種できるようになりました。

フルミスト:添付文書
鼻の粘膜から、体に免疫をつくる
インフルエンザウイルスは、鼻やのどといった気道の粘膜の表面から体に入り、粘膜の細胞で増えて、1〜2日後に症状を起こします。フルミストは、その入り口にあたる鼻の粘膜に、弱めたウイルスを直接届けます。
添付文書によれば、この接種によって、血液中の抗体、粘膜の抗体、そしてウイルスに反応する細胞(T細胞)という3つの働きが引き出され、インフルエンザの予防に寄与すると考えられています1)。鼻やのどだけで働くのではなく、体全体の免疫もあわせて立ち上がる仕組みです。
左右の鼻の穴に少量ずつスプレーするだけで、数秒で終わります。接種後に安静にしていただく必要は原則としてなく、そのままお帰りいただけます。
「生ワクチン」であることが、特徴でもあり注意点でもある
フルミストは、感染する力を弱めたインフルエンザウイルスそのものを使う「生ワクチン」です。ここが、ウイルスの成分だけを使う従来の注射(不活化ワクチン)との最も大きな違いです。
弱めたとはいえ生きたウイルスを使うため、接種後に鼻水や軽い発熱といった、かぜに似た症状が出ることがあります。また、免疫の働きが弱っている方には使えません。この後の「デメリット」「接種を避けたほうがよい方」の項目で詳しくご説明します。
フルミストの効果|注射のワクチンとの違い
「注射より効くのか、劣るのか」は、最も多くいただくご質問です。まず前提として、フルミストと注射のワクチンを直接比較した国内の臨床試験は行われていません。したがって「どちらが優れている」と断定できる根拠は、現時点ではありません。
承認の根拠となった国内試験の結果
国内では、2歳以上19歳未満の健康な小児910例を対象に、フルミストと偽薬(プラセボ)を比較する試験が行われました。
インフルエンザを発症した方の割合は、フルミストを接種した群で25.5%、偽薬の群で35.9%でした。接種した群のほうが発症が少なく、相対的に28.8%(95%信頼区間:12.5〜42.0%)の減少が認められています1)。
| ウイルスの型 | フルミスト群 (595例) |
偽薬群 (290例) |
発症の減少率 (95%信頼区間) |
|---|---|---|---|
| すべての型 | 152例(25.5%) | 104例(35.9%) | 28.8%(12.5〜42.0) |
| A型(H3N2) | 127例(21.3%) | 86例(29.7%) | 28.0%(9.0〜43.1) |
| A型(H1N1) | 2例(0.3%) | 2例(0.7%) | 51.3%(−244.3〜93.1) |
| B型(山形系統) | 16例(2.7%) | 9例(3.1%) | 13.4%(−93.7〜61.2) |
| B型(ビクトリア系統) | 4例(0.7%) | 3例(1.0%) | 35.0%(−188.5〜85.4) |
この試験が行われたシーズンはA型(H3N2)の流行が中心で、発症例の大半をこの型が占めています。すべての型を合わせた結果と、A型(H3N2)については、信頼区間の下限が0を上回っており、偽薬より発症が少なかったと判断できる結果でした。
一方、A型(H1N1)とB型については、そもそも発症した方がごく少数だったため、信頼区間が大きく広がっています。これらの型に対する効果は、この試験だけでは判断できません。
また、接種した群でも4人に1人がインフルエンザを発症しています。「接種すれば必ずかからない」というワクチンではなく、かかる方を減らすものだとご理解ください。
海外での評価
米国疾病予防管理センター(CDC)は、諸外国のデータにおいて、小児における経鼻ワクチンの予防効果は標準的な不活化ワクチン(注射)と同程度であることが示されている、としています2)。日本国内で両者を直接比較した試験はありませんが、判断の材料のひとつになると思われます。
効果の持続と、接種に適した時期
接種後おおむね2週間で効果が得られ、1シーズンにわたって持続すると考えられています。インフルエンザの流行は例年12月から翌3月ごろにかけて本格化しますので、10月から11月中の接種がひとつの目安になります。
注射(不活化ワクチン)との比較
接種後おおむね2週間で効果が得られ、1シーズンにわたって持続すると考えられています。インフルエンザの流行は例年12月から翌3月ごろにかけて本格化しますので、10月から11月中の接種がひとつの目安になります。
注射(不活化ワクチン)との比較
どちらが優れているというより、性質が異なります。お子さまの年齢や持病の有無によって、適している方が変わります。
| フルミスト(経鼻) | 注射(不活化ワクチン) | |
|---|---|---|
| 接種方法 | 鼻に噴霧 | 腕に注射 |
| ワクチンの種類 | 生ワクチン(弱めた生きたウイルス) | 不活化ワクチン(ウイルスの成分) |
| 国内の対象年齢 | 2歳以上19歳未満 | 生後6か月以上(年齢の上限なし) |
| 接種回数 | 1回 | 13歳未満は2回、13歳以上は1回 |
| 接種時の痛み | ほとんどありません | 針を刺す痛みがあります |
| 主な副反応 | 鼻づまり・鼻水、咳、のどの痛み、頭痛など | 接種部位の痛み・赤み・腫れ、発熱など |
| 喘息のある方 | 慎重な判断が必要です | 接種できる場合が多いです |
フルミストのデメリット・注意点
痛みがないという利点ばかりが注目されがちですが、選ぶ前に知っておいていただきたい点がいくつかあります。
接種後にかぜのような症状が出ることがある
最も頻度が高いのは鼻づまり・鼻水で、国内の試験では半数以上の方に報告されています。次いで咳、のどの痛み、頭痛がみられます。多くは数日でおさまるとされていますが、「予防接種をきっかけに体調をくずした」と感じられる方もいらっしゃいます。具体的な発生頻度は、後の項目で数字をお示しします。
受けられる年齢が限られている
国内で承認されている対象は2歳以上19歳未満に限られます。19歳以上の方、2歳未満のお子さまは、注射のワクチンを選択していただくことになります。ご家族そろって同じ方法で、というわけにはいきません。
持病や体調によっては接種できない
喘息のある方、免疫の働きが低下している方、妊娠中の方などは接種の対象になりません。また、当日に強い鼻水や鼻づまりがあると、ワクチンが十分に行き渡らないため、接種を見合わせることがあります。
公費の助成や供給量に制約がある
自治体の助成の対象範囲や金額は注射のワクチンと異なる場合があり、また供給量にも限りがあります。お住まいの自治体の制度と、医療機関の入荷状況の両方をご確認ください。
フルミストは危険?副反応の実際のデータ
「危険性」「死亡」といった言葉とあわせて検索される方が多いワクチンです。不安なまま接種を判断していただきたくないので、公表されている数字をそのままお示しします。
国内試験で報告された副反応の頻度
添付文書には、承認の根拠となった国内第III相試験の結果が記載されています。フルミストを接種した608例のうち、副反応がみられたのは413例(67.9%)でした1)。主な内訳は次のとおりです。
| 症状 | 報告数 | 割合 |
|---|---|---|
| 鼻づまり・鼻水 | 360例 | 59.2% |
| 咳 | 169例 | 27.8% |
| のど・口の痛み | 109例 | 17.9% |
| 頭痛 | 68例 | 11.2% |
半数以上の方に鼻づまりや鼻水がみられる計算になります。決して低い頻度ではありませんが、その多くは軽い症状で、数日のうちにおさまるとされています。接種後しばらくは鼻の症状が出るものと見込んで、ご予定を組んでいただくとよいと思います。
まれに報告されている重い副反応
添付文書では、重大な副反応としてショックおよびアナフィラキシーが挙げられています(いずれも発生頻度は不明とされています)。
また、海外の市販後の情報として、ベル麻痺を含む脳神経の障害、脳炎、けいれん(熱性けいれんを含む)、ギラン・バレー症候群、血管の炎症が報告されていることも記載されています1)。頻度はいずれも明らかになっていませんが、こうした報告があること自体は知っておいていただきたい情報です。
接種によってインフルエンザを発症することはあるのか
国内の試験では、接種から28日以内にインフルエンザを発症した方がフルミスト群608例中11例(1.8%)報告されています。いずれもワクチン由来のウイルスによるもので、発熱や鼻水、咳、のどの痛み、頭痛といった症状がみられましたが、肺炎や脳症を起こした方、入院が必要になった方は認められておらず、3〜12日で回復したと報告されています3)。
「フルミスト 死亡」という言葉とあわせて検索される方も多いのですが、この国内試験において、重症化した例や入院を要した例は認められていません。とはいえ、どのワクチンにも副反応はあり、まれに重いアレルギー反応が起こる可能性は残ります。接種前の診察で体調と既往歴を確認する過程が欠かせないのは、このためです。

効果と対象年齢
フルミストは2歳以上〜19歳未満の健康な方に限って使用できます。それ以外の方は従来の注射型ワクチンをご利用いただきます。
フルミストは、2歳から19歳未満の健康な方が対象です。喘息や免疫抑制状態のある方、妊娠中の方には適さないため、必ず医師の診察を受けてから接種します。効果は注射型ワクチンと同等で、接種から約2週間で免疫がつき、4~5か月持続します。インフルエンザの流行期(12月~翌3月)に備えて、10月から11月中の接種が理想的です。
効果はいつから出て、いつまで続くのか
接種後おおむね2週間で効果が得られ、その後1シーズンにわたって持続すると考えられています。
流行が本格化する12月に間に合わせるには、逆算して10月から11月中の接種が目安になります。年内であれば遅すぎるということはありませんが、効果が得られるまでの2週間を見込んでご予定ください。
なお、接種から4週間以内は、弱めたワクチン由来のウイルスが鼻の中に残っている可能性があるとされています1)。この期間に発熱してインフルエンザの迅速検査を受けると、実際の感染なのかワクチンによるものなのか判断が難しくなる場合があります。接種時期をお伝えいただければ、検査結果の解釈に役立ちます。
当院でのフルミスト接種の流れ
完全予約制です。数に限りがありますのでご連絡ください。初めての方でも安心できるよう、当院では診察から接種までスムーズな流れをご用意しています。
①事前に問診・診察を行い、接種適応を確認します。
②鼻にスプレーを噴霧し、数秒で接種完了。
③接種後の安静は不要で、そのまま帰宅可能。
当院でのフルミスト接種について
おなかとおしりのクリニック 東京大塚では、インフルエンザ予防接種としてフルミスト(経鼻)と従来の注射(不活化ワクチン)の両方をご用意しています。
フルミストの国内承認上の対象は2歳以上19歳未満ですが、当院では6歳以上19歳未満の方を対象としています。6歳未満のお子さまは、小児科での接種をご検討ください。
料金、豊島区の助成、接種開始時期、ご予約方法については、最新の内容を診療案内ページにまとめています。
ワクチンには限りがあり、入荷状況によっては接種をお受けできない場合があります。ご来院前に、診療案内ページまたはお知らせで最新の状況をご確認ください。
当院では、帯状疱疹ワクチンなど、その他の予防接種についてもご相談を承っています。
フルミストの料金(*市区町村の助成金対象外の方)
| 料金(税込) | |
| フルミスト | 8,000円 |
豊島区小児インフルエンザ任意接種一部助成対象者の方
当院では、2歳から中学3年生の方が対象です。
| 料金(税込) | |
| フルミスト | 4,000円 |
フルミストについて よくあるご質問
接種のときに痛みはありますか
接種は1回で足りますか
接種した後、くしゃみで出てしまったら効果はなくなりますか
接種した子どもから、家族にうつることはありますか
注射とフルミスト、どちらを選べばよいですか
まとめ
フルミストは、鼻の粘膜(鼻・喉)にワクチンを噴霧する“経鼻ワクチン”で、針を使わず接種できるため「注射が苦手」な方にも適しています。
接種対象は2歳以上〜19歳未満の健康な方に限定されており、
喘息・免疫抑制状態・妊娠中などの方には適さないため、必ず医師の診察を受けてください。
効果は接種から約2週間で免疫がつき、4〜5か月持続するとされています。
流行期(12月〜翌3月)に備えて、10月〜11月中の接種が理想的です。
当院での接種の流れは、
①問診・診察で適応確認 → ②鼻にスプレー噴霧 → ③数秒で完了。
接種後の安静は不要で、スムーズに受けていただけます。
料金(任意接種対象)についても当院でご案内しております。
2歳〜中学3年生の助成対象者向けの料金設定もございます。

監修:東京都豊島区おなかとおしりのクリニック 東京大塚
院長 端山 軍(MD, PhD Tamuro Hayama)
資格:日本消化器病専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
日本大腸肛門病学会指導医・専門医・評議員
日本外科学会専門医・指導医
日本消化器外科学会専門医・指導医
帝京大学医学部外科学講座非常勤講師
元帝京大学医学部外科学講座准教授
医学博士
院長プロフィール