2026年9月20日
市販薬と処方薬、何が違うのか
切れ痔(裂肛)は、肛門の出口近くの皮膚が裂けた状態をいいます。これに使われる市販の外用薬は、添付文書上「いぼ痔・きれ痔の痛み・出血・はれ・かゆみの緩和」を目的としたお薬です。一方、病院で処方される薬は、診察で切れ痔と確認したうえで、症状に合わせて成分を選び、便をやわらかくする内服薬と組み合わせられる点が異なります。市販薬を使う場合も、添付文書に沿って期間を区切り、改善しないときは中止して相談することが大切です。
市販薬 症状をやわらげることが目的。用法・用量と使用期間の目安が決まっている
処方薬 診断を前提に成分を選べる。便通を整える内服薬も同時に使える
受診 出血がある、痛みが強い、繰り返す場合は市販薬の前に受診を

切れ痔の市販薬に入っている主な成分
ドラッグストアで買える痔の外用薬は、いくつかの成分を組み合わせて作られています。商品名だけで選ぶより、どの成分が何のために入っているかを知っておくほうが、自分の症状に合うかどうかを判断しやすくなります。
| 成分の種類 | 期待される働き |
|---|---|
| ステロイド性抗炎症成分 プレドニゾロン酢酸エステルなど |
炎症をおさえ、出血・はれ・かゆみをしずめる |
| 局所麻酔成分 リドカインなど |
患部の痛みやかゆみを一時的にしずめる |
| 組織修復成分 アラントインなど |
傷の治りをたすけ、組織の修復を促す |
| 血行改善成分 ビタミンE酢酸エステルなど |
末梢の血のめぐりをよくし、うっ血の改善をたすける |
| 油脂性の基剤 白色ワセリンなど |
傷ついた部分を覆って保護し、刺激を減らす |
※配合されている成分は製品ごとに異なります。購入時は添付文書の成分欄をご確認ください。

ステロイドが入っているかどうかで分類が変わる
ステロイド性抗炎症成分を含む痔の市販薬は「指定第2類医薬品」に分類され、購入時に薬剤師や登録販売者への相談が推奨されています。炎症を抑える力は期待できますが、添付文書には長期連用を避けること、患部が化膿している場合は使用しないことが記載されています。ステロイドを含まない製品もありますので、どちらが適しているか迷う場合は、購入前に薬剤師などにご相談ください。
切れ痔の市販薬を使うときの注意点
市販薬は、使い始める前と、使い始めてからの2つの場面で判断が必要になります。とくに「いつまで使うか」を決めずに使い続けることが、受診の遅れにつながりやすい点です。
図の要点:出血がある、痛みが強い、繰り返している場合は、市販薬より先に受診をおすすめします。当てはまらない場合は、外用薬を使いながら便通を整え、10日間を目安に見直します。やわらいだ場合は便通を整える習慣を続け、よくならない場合は使用を中止して医師・薬剤師にご相談ください。
添付文書に書かれている注意点
●10日間ほど使っても症状がよくならない場合は、使用を中止して医師・薬剤師・登録販売者に相談する
●長期連用は避ける
●患部が化膿している場合は使用しない
記載は製品によって異なりますので、お手元の添付文書を必ずご確認ください。なお、肛門からの出血は切れ痔以外の病気でも起こります。出血(血便・下血)がある場合は、市販薬で様子を見る前に一度受診してください。
病院で処方される薬は何が違うのか
切れ痔の市販薬と処方薬は、成分そのものが大きくかけ離れているわけではありません。違いは、診断がついていることと、症状に合わせて成分の組み合わせを変えられること、そして内服薬を併用できることにあります。
切れ痔では、この「便をやわらかくする内服薬を一緒に使えるかどうか」が、実際には大きな差になります。硬い便が通るかぎり同じ場所が裂け続けるため、外用薬だけでは傷が治りきらないことがあるためです。
オロナインやワセリンは切れ痔に使えるのか
家にある塗り薬で代用できないか、というご質問をよくいただきます。それぞれ承認されている効能・効果が異なります。
オロナインH軟膏
殺菌成分を配合した皮膚疾患・外傷治療薬で、効能・効果はにきび、吹出物、やけど(かるいもの)、ひび、しもやけ、あかぎれ、きず、水虫などです。添付文書の効能・効果に痔は含まれていません。
ワセリン
皮膚を覆って保護し、刺激を減らす働きが中心です。痔の市販薬にも基剤として使われていますが、ワセリン単独には炎症や痛みをおさえる成分は含まれていません。
痛みや出血がある切れ痔に対しては、痔の治療を目的として承認された薬を使うか、受診して相談することをおすすめします。
市販薬だけでは切れ痔が治りにくいことがある理由
切れ痔では、傷ができると肛門を締める筋肉が縮んだ状態になり、傷の周りの血のめぐりが悪くなって治りにくくなると考えられています。さらに、痛みから排便をがまんすると便が硬くなり、次の排便で同じ場所がまた裂けます。外用薬はこの輪のうち「痛みと炎症」に働きますが、便が硬いままでは原因が残ったままになります。
薬を使うときは、水分と食物繊維をとる、便意をがまんしない、強くいきまない、排便時に長く座り続けないといった点も同時に見直してください。具体的な排便の工夫は切れ痔の原因と排便のしかたにまとめています。
切れ痔の薬について よくあるご質問
診察でよくいただくご質問をまとめました。気になる点があれば、受診時にお尋ねください。
切れ痔そのものについて知りたい方へ
症状の見分け方、できやすい場所、急性と慢性の違い、手術が検討される場合、受診の目安については疾患ページで解説しています。
市販薬で改善しないときはご相談ください
おなかとおしりのクリニック東京大塚では、肛門の診察から大腸内視鏡検査まで対応しています。JR大塚駅南口から徒歩1分、火曜日は女性医師が診察を担当しています。
お電話:03-6912-5995


監修:東京都豊島区おなかとおしりのクリニック 東京大塚
院長 端山 軍(MD, PhD Tamuro Hayama)
資格:日本消化器病学会認定 消化器病専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医・指導医
日本大腸肛門病学会認定 大腸肛門病専門医・指導医・評議員
日本外科学会認定 外科専門医・指導医
日本消化器外科学会認定 消化器外科専門医・指導医
日本がん治療認定医機構認定 がん治療認定医
日本消化器外科学会認定 消化器がん外科治療認定医
帝京大学医学部外科学講座非常勤講師
元帝京大学医学部外科学講座准教授
医学博士 など
院長プロフィール

