おしりにできもの
おしりにできもの
「おしりに何かできている」「肛門にイボやしこりのようなものが触れる」——場所が場所だけに、誰にも相談できず、ひとりで検索を続けている方は少なくありません。
肛門やおしりのできものには、いぼ痔(痔核)や皮膚のたるみのように心配の少ないものから、その日のうちに処置が望ましい肛門周囲膿瘍、まれではあるものの見逃したくない肛門がんまで、さまざまな原因が考えられます。見た目や触った感じが似ていても対処がまったく異なるため、自己判断は容易ではありません。
このページでは、大腸肛門病の診療に20年以上携わってきた専門医の立場から、おしり(肛門)のできもの・しこり・イボの見分け方の目安と、受診すべきタイミングについて解説します。
この記事の要点
肛門のできものの多くは、いぼ痔(痔核)・血栓性外痔核・皮垂(皮膚のたるみ)といった良性の変化とされています。ただし、激しい痛みと熱っぽさを伴う場合は肛門周囲膿瘍の可能性があり、当日〜翌日の受診が望まれます。また、痛みがなくても徐々に大きくなる硬いしこりや、出血・治らないただれを伴う場合は、肛門がんなどを除外するための診察が勧められます。できものの種類を外見だけで正確に判断することは専門医でも診察なしには難しいため、気になる症状があれば肛門科の受診をご検討ください。
まずは、症状のパターンごとに考えられる主な病気を一覧にしました。あくまで目安であり、実際には複数の病気が同時に存在することもあります。
まずは、症状のパターンごとに考えられる主な病気を一覧にしました。あくまで目安であり、実際には複数の病気が同時に存在することもあります。

| 症状のパターン | 考えられる主な病気 | 受診の急ぎ度 |
|---|---|---|
| 急に腫れて、ズキズキ痛い(青紫色のふくらみ) | 血栓性外痔核、嵌頓(かんとん)痔核 | 数日以内の受診が望ましい |
| 激痛+熱感、発熱、座れないほどの痛み | 肛門周囲膿瘍 | 当日〜翌日の受診を |
| 痛くない・やわらかいイボ状のもの・排便時に出てきて押すと戻る | 内痔核の脱出(脱肛)、肛門ポリープ、直腸脱 | 早めの受診を推奨 |
| 痛くない・ぶよぶよした皮膚のたるみ | 肛門皮垂(スキンタグ) | 急ぎではないが確認を |
| しこりから膿が出る・腫れと膿を繰り返す | 痔瘻(じろう・あな痔) | 早めの受診を推奨 |
| 小さなブツブツ・イボが増えてきた(カリフラワー状) | 尖圭コンジローマ | 早めの受診を推奨 |
| 硬いしこりが徐々に大きくなる、出血や治らないただれを伴う | 肛門がん等の可能性も(要精査) | 早期の受診を |
| 肛門から少し離れた場所(おしりのほっぺ・尾骨のあたり) | 粉瘤、毛嚢炎、毛巣洞 | 腫れ・痛みがあれば受診を |
ここからは、早見表に挙げた病気をひとつずつ、症状の特徴・原因・治療の順に解説します。ご自身の症状に近い項目からお読みいただいても構いません。
おしりのできもので受診される方のなかでも特に多い、「突然の痛いふくらみ」の代表格です。
ある日突然、肛門のふちに痛みを伴うふくらみができた場合、まず考えられるのが血栓性外痔核です。肛門周囲の皮膚の下にある静脈内に血のかたまり(血栓)ができた状態で、青紫色のコリコリしたイボのようなしこりとして触れることが多いとされています。長時間の座位、いきみ、飲酒、冷えなどをきっかけに生じることがあります。
痛みは強いものの、多くの場合は軟膏や内服薬などの保存的治療で血栓が徐々に吸収され、数週間ほどで小さくなっていくとされています。痛みが非常に強い場合や腫れが大きい場合には、局所麻酔下に血栓を取り除く処置が選択されることもあります。どちらの方針が適しているかは、腫れの大きさや発症からの時間によって異なります。
痛みがないまま進行するため、できものの存在で初めて気づかれることの多い病気です。
排便時に肛門から何かが出てきて、指で押すと中に戻る——このような場合は、内痔核が大きくなって外に脱出している状態(いわゆる脱肛)の可能性があります。内痔核は痛みを感じにくい直腸側の粘膜にできるため、「痛くないのにできものがある」「トイレットペーパーに血がつく」という形で気づかれることが少なくありません。
内痔核の進行度は脱出の程度によりI度からIV度に分類され(Goligher分類)、程度に応じて、軟膏・生活習慣の改善などの保存的治療、注射で痔核を硬化させるALTA療法(ジオン注射)、切除手術などが検討されます。早い段階であれば体への負担が小さい治療で対応できる可能性が高くなります。
おしりのできもののなかで、最も受診を急いでいただきたいのがこの病気です。
肛門のまわりがパンパンに腫れて激しく痛む、触ると熱っぽい、発熱を伴う——このような場合は、肛門のまわりに膿がたまる肛門周囲膿瘍が疑われます。肛門周囲膿瘍は市販薬や抗菌薬の内服だけで治ることは少なく、切開して膿を出す処置(切開排膿)が治療の原則とされています。放置すると膿のたまりが広がったり、膿の通り道が残って痔瘻に移行したりすることがあるため、我慢せず早めの受診をおすすめします。
詳しくは肛門周囲膿瘍と痔瘻の解説記事をご覧ください。当院では日帰りでの切開排膿に対応しています。
肛門周囲膿瘍のあとに続いて起こることが多い、膿の通り道(トンネル)の病気です。
肛門のわきにしこりがあり、そこから膿や分泌物が出る、腫れては破れてを繰り返す——このような経過は痔瘻(じろう)に特徴的とされています。痔瘻は肛門の内側と皮膚の間に膿の通り道(瘻管)ができた状態で、多くは肛門周囲膿瘍のあとに生じます。
瘻管は自然にふさがることがほとんどなく、薬では治らないため、治療には手術(瘻管を開放する方法や、ゴムを用いて徐々に治すシートン法など)が必要とされています。また、長期間放置された痔瘻から、まれにがん(痔瘻がん)が発生した報告もあり、放置は勧められません。
治療を急ぐ必要は少ないものの、ほかの病気ときちんと区別しておきたいできものです。
肛門のふちにやわらかい皮膚のたるみがあり、痛みも出血もない場合は、肛門皮垂(スキンタグ)の可能性があります。外痔核が腫れて治ったあとや、切れ痔の慢性化、出産などをきっかけに皮膚がたるんで残ったもので、それ自体は健康への影響が少ない良性の変化とされています。
治療は必須ではありませんが、便が拭き取りにくく皮膚炎やかゆみの原因になっている場合や、見た目が気になる場合には、切除を検討することもできます。ただし「ただのたるみだと思っていたら別の病気だった」というケースもあるため、一度は診察で確認しておくと安心です。
いぼ痔と間違えられやすい、肛門の内側から出てくる良性のできものです。
排便時に肛門から硬めのできものが出てきて、指で押し戻せる場合は、肛門ポリープの可能性があります。肛門の内側にある歯状線という部位の慢性的な炎症(切れ痔の繰り返しなど)に伴ってできる線維性の隆起で、大腸のポリープとは異なり、がん化はしないと考えられています。
ただし薬では小さくならないため、脱出を繰り返して気になる場合は切除(日帰り手術)が検討されます。また、ご自身では肛門ポリープだと思っていたものが、実は脱出した痔核や直腸のポリープだったということもあるため、診察による確認が大切です。
ウイルスによる性感染症のひとつで、放置すると数が増えていく点が特徴です。
肛門のまわりに小さなイボ状のブツブツが複数でき、徐々に数が増えたり、カリフラワーのように集まったりしている場合は、尖圭コンジローマが考えられます。ヒトパピローマウイルス(HPV、主に6型・11型)の感染によって生じる性感染症のひとつとされています。
治療には塗り薬(イミキモドクリーム)や、切除・焼灼などの外科的治療があり、病変の範囲や部位によって選択されます。治療後も再発しやすいことが知られているため、経過観察が重要です。放置すると病変が拡大することがあるため、早めの受診をおすすめします。
肛門そのものではなく、おしりの皮膚側にできるタイプのできものです。
肛門そのものではなく、おしりの皮膚(臀部)にできるしこりとしては、粉瘤(ふんりゅう)や毛嚢炎(もうのうえん)が代表的です。粉瘤は皮膚の下に袋状の構造ができて老廃物がたまったもので、普段は痛みがないことが多いものの、細菌感染を起こすと急に赤く腫れて痛むことがあります(炎症性粉瘤)。毛嚢炎は毛穴に細菌が入って起こる炎症で、ニキビのような赤いブツブツとして現れます。
感染を起こした粉瘤は、切開して内容物を出す処置が必要になることがあります。自分でつぶすと悪化や跡が残る原因になり得るため、避けたほうがよいとされています。
肛門周囲膿瘍と紛らわしい、肛門より背中側にできる病気です。
肛門より背中側、尾骨(びこつ)のあたりが腫れて痛む・膿が出る場合は、毛巣洞の可能性があります。皮膚の下に体毛が入り込んで感染を起こす病気で、毛深い方や若い男性、長時間座る職業の方に多い傾向があると報告されています。
症状を繰り返す場合は、病変部を切除する手術が検討されます。肛門周囲膿瘍や痔瘻と紛らわしいこともあるため、専門医による鑑別が望まれます。
頻度はまれですが、この記事で最もお伝えしたい「見逃したくない」できものです。
肛門にできる悪性腫瘍(肛門がん・肛門管がん)は、大腸がんと比べるとまれな病気ですが、「痔だと思って市販薬で様子を見ていた」という形で発見が遅れやすいことが指摘されています。次のような特徴がある場合は、良性のできものと決めつけず、診察を受けることが勧められます。
診断には専門医による視診・触診・肛門鏡検査に加え、必要に応じて組織検査(生検)が行われます。早期に見つかれば体への負担が少ない治療で対応できる可能性が高くなるため、「まさか」と思っても一度の受診が大切です。
ここまでの病気ごとの解説を踏まえて、受診を急ぐべきかどうかの目安を2段階に整理しました。ひとつでも当てはまる場合は、受診をご検討ください。
【当日〜翌日の受診が望まれる症状】
【急を要しないものの、早めの受診をおすすめする症状】
「痛くないから大丈夫」とは限らないのが、おしりのできものの難しいところです。内痔核も肛門がんも、初期には痛みを伴わないことが多いとされています。痛みの有無よりも、「変化しているかどうか」「繰り返しているかどうか」を受診の目安にしていただくのがよいと考えます。
肛門やそのまわりのできものは、肛門科(大腸肛門外科)の受診をおすすめします。原因が肛門の内側にある場合、外から見ただけでは判断できず、肛門鏡などによる専門的な診察が必要になるためです。また、おしりからの出血には大腸のポリープやがんが隠れていることもあるため、必要に応じて大腸カメラ検査まで行える消化器内科併設の医療機関であれば、原因の検索を一か所で完結できます。
肛門から離れた臀部の皮膚のできもの(粉瘤・毛嚢炎など)は皮膚科でも対応可能ですが、肛門との位置関係の判断が難しい場合は、まず肛門科でご相談いただければ、適切な診療科をご案内できます。
妊娠中や出産後は、ホルモンの変化やお腹の圧迫、分娩時のいきみの影響で、いぼ痔(痔核)や肛門皮垂が生じやすいことが知られています。「出産してからおしりにできものが残っている」というご相談は、当院でも多くいただきます。授乳中でも使用しやすい薬を選択できる場合がありますので、我慢せずご相談ください。
また、恥ずかしさから受診をためらううちに症状が進んでしまうケースは、女性に特に多い傾向があります。診察は下着をすべて脱がない形で、タオルで覆いながら短時間で行いますので、まずは一度ご相談いただければと思います。
「診察が恥ずかしい」「痛いことをされそうで怖い」という理由で受診をためらう方は非常に多くいらっしゃいます。当院では、次のような配慮を行っています。
JR大塚駅南口から徒歩1分、豊島区の肛門科(おなかとおしりのクリニック東京大塚)では、日帰り手術を含めた肛門疾患の診療を行っています。
おしり(肛門)のできものについて、診察室でよくいただくご質問にお答えします。気になる質問をタップすると回答が開きます。
痛みがない場合でも、内痔核の脱出、肛門皮垂、肛門ポリープのほか、まれに肛門がんなどの可能性もあり、放置はおすすめできません。特にしこりが徐々に大きくなっている場合や、出血を伴う場合は、早めに肛門科の診察を受けることが勧められます。
ご自身でつぶすことはおすすめできません。細菌感染の悪化や、傷跡が残る原因になり得るほか、血栓性外痔核や膿瘍を無理に圧迫すると症状が悪化するおそれがあります。膿がたまっている場合は、医療機関での切開排膿などの適切な処置を受けることが望まれます。
軽いいぼ痔などでは市販薬で症状が和らぐこともありますが、肛門周囲膿瘍・痔瘻・尖圭コンジローマ・肛門がんなどは市販薬では治らないとされています。2〜3週間使用しても改善しない場合や、痛み・腫れが強い場合は、自己判断を続けず受診をご検討ください。
肛門やそのふちのできものは肛門科(大腸肛門外科)が専門です。肛門から離れたおしりの皮膚のできものは皮膚科でも対応できますが、判断に迷う場合はまず肛門科でご相談ください。出血を伴う場合は、大腸カメラ検査に対応した消化器内科併設の医療機関ですと、大腸の病気の確認まで一度に行えます。
診察は横向きに寝た姿勢で、タオルで覆いながら必要な部分だけを短時間確認します。すべて脱ぐことはありません。視診・触診・肛門鏡による診察が基本で、痛みが強い場合には無理に進めることはありませんので、ご安心ください。
血栓性外痔核のように保存的治療で軽快することが多いものもあれば、痔瘻や肛門ポリープ、尖圭コンジローマのように自然治癒が期待しにくく、処置や手術が必要とされるものもあります。種類によって経過が大きく異なるため、まずは診察で原因を確認することをおすすめします。
肛門(おしり)のできもの・しこりの原因は、血栓性外痔核、いぼ痔の脱出、肛門周囲膿瘍、痔瘻、皮垂、肛門ポリープ、尖圭コンジローマ、粉瘤、毛巣洞、そしてまれに肛門がんまで、多岐にわたります。共通して言えるのは、外見や触った感じだけで正確に見分けることは難しいということです。
激しい痛みや発熱があればその日のうちに、痛みがなくても変化し続けるできものがあれば早めに、肛門科へご相談ください。恥ずかしさから受診が遅れることが、いちばん避けたい事態です。
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※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としており、個別の診断・治療に代わるものではありません。症状がある場合は医療機関を受診してください。
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