2026年5月25日
「AI内視鏡って本当に精度が高いの?」
「普通の胃カメラ・大腸カメラと何が違う?」
「AIが診断するなら医師はいらないの?」
最近、胃カメラや大腸カメラの分野で「AI内視鏡(内視鏡AI)」という言葉を耳にする機会が増えています。実際に、AIを搭載した内視鏡システムを導入する医療機関も年々増加しています。
AI内視鏡は、内視鏡画像をリアルタイムで解析し、ポリープや早期がんなどの病変発見をサポートする技術です。特に大腸内視鏡検査では、ポリープ見逃し防止への期待から世界的に注目されています。
ただし、AIは自動で診断を確定するものではありません。あくまで内視鏡専門医の観察を補助するシステムであり、最終判断は医師が行います。
一方で、
AIなら見逃しゼロなの?
AIだけで診断しているの?
AI大腸内視鏡は本当に精度が高いの?
AI胃カメラはどこまで実用化されているの?
といった疑問や不安を持つ方も少なくありません。
この記事では、前半では患者さん向けにわかりやすく、後半ではADR(腺腫検出率)・CADe・CADx・AI画像診断などの専門的な内容も含めて、内視鏡AIについて詳しく解説します。
AI内視鏡(内視鏡AI)とは?
AI内視鏡とは、胃カメラ・大腸カメラ検査中の画像をAI(人工知能)が解析し、病変の発見や診断をサポートするシステムです。正式には「内視鏡画像診断支援システム」と呼ばれます。

AIは過去の大量の内視鏡画像を学習しており、
・大腸ポリープ
・早期大腸がん
・胃がん
・炎症
・血管異常
などの特徴を解析できます。
検査中に病変が疑われる部分を検出すると、画面上に枠やマーカーを表示し、医師に注意喚起します。
つまりAIは、
「ここに病変がある可能性があります」
と医師に知らせる、“第二の目”として働いています。
AI内視鏡で何が変わるのか
従来の内視鏡検査では、病変発見は医師の経験や集中力に大きく依存していました。
熟練した内視鏡専門医ほど発見率は高くなりますが、
・小さなポリープ
・平坦な病変
・ヒダの裏に隠れた病変
・一瞬しか映らない病変
を完全に見逃さないことは容易ではありません。
そこでAIがリアルタイムで画像解析を行い、病変候補を表示することで、見逃しリスク低減が期待されています。
特にAI大腸内視鏡では、「AIポリープ検出」による病変発見率向上が大きなテーマとなっています。
AI内視鏡でできる3つのこと

病変を見つける
AIがポリープや病変を検出すると、画面上に枠・色・音で医師に通知します。Computer-Aided Detection(CADe)と呼ばれ、見落としやすい病変の発見補助に期待されています。
病変の性質を予測する
病変が腫瘍性か非腫瘍性か、良性か悪性かといった質的診断をAIが推定します。Computer-Aided Diagnosis(CADx)と呼ばれ、不要な生検の削減や、その場での治療方針判断の補助を目的としています。
検査精度を安定させる
内視鏡検査は集中力を要する検査です。AIは疲労せず常に同じ条件で解析を行うため、医師の経験差・疲労・注意力低下による影響を補い、検査精度の標準化に寄与する可能性があります。
患者さんにとってのメリット
見逃し防止効果が期待できる
最大のメリットです。
特に大腸がんは、小さなポリープ(腺腫)の段階で発見・切除することが重要です。
AIによって病変発見率が向上すれば、将来的な大腸がん予防につながる可能性があります。
早期発見・早期治療につながる
胃がん・大腸がんは、早期発見できれば内視鏡治療のみで完治できるケースも少なくありません。
AI胃カメラ・AI大腸内視鏡は、早期病変発見の補助として期待されています。
安心感につながる
「できるだけ精度の高い検査を受けたい」
「大腸ポリープの見逃しが心配」
と考える方にとって、AI支援システムは安心材料の一つになります。
AI内視鏡でも見逃しはゼロではない
非常に重要なポイントです。

現時点では、AIを用いても見逃しを完全にゼロにすることは困難です。
例えば、
・便が残っている
・視野が悪い
・出血している
・病変がヒダに隠れている
などでは検出が難しい場合があります。
またAIが、
・粘膜のヒダ
・泡
・残渣
を病変と誤認する「偽陽性(ぎようせい)」もあります。
そのため、
「AI搭載=絶対安心」
ではありません。
AIだけで診断しているわけではない
AIはあくまで「診断支援システム」です。
最終判断を行うのは医師です。
つまり本当に重要なのは、
・消化器内視鏡専門医が行うか
・丁寧に観察しているか
・観察時間を確保しているか
・前処置が適切か
などを総合的に見ることです。
「AI+経験豊富な内視鏡専門医」
の組み合わせが理想的と考えられています。
国内で導入されている代表的なAI内視鏡システム
EndoBRAIN-EYE(オリンパス)
オリンパス社のAI内視鏡支援システムです。
大腸ポリープが疑われる領域をリアルタイムで検出し、画面上に表示します。
多施設臨床試験で有効性が確認されており、国内でも広く導入が進んでいます。
CAD EYE(富士フイルム)
富士フイルム社のAI画像診断支援システムです。
大腸用だけでなく胃カメラ領域にも展開されており、病変検出(CADe)に加え、質的診断支援(CADx)機能も搭載されています。
EIRL(エルピクセル)
エルピクセル社による医療画像解析AIシリーズです。
内視鏡領域を含め、さまざまな画像診断支援への応用が進んでいます。
ADR(腺腫検出率)とAI内視鏡
ここからは少し専門的な内容です。
AI内視鏡で最も注目されている指標が、
ADR(Adenoma Detection Rate:腺腫検出率)
です。
これは、
「大腸内視鏡検査を受けた患者さんのうち、腺腫が発見された割合」
を示します。
ADRが高いほど、
見逃しが少ない
将来的な大腸がん発症リスク低下
につながることが知られており、国際的に確立された検査の質指標です。
AIはADR向上に寄与する
複数のランダム化比較試験やメタアナリシスでは、
AI支援下の大腸内視鏡検査は、通常検査よりADRを有意に向上させる
ことが報告されています。
特に、
・5mm以下の微小腺腫
・平坦型病変
・右側結腸病変
で有効性が示唆されています。
研究によって差はありますが、ADRが約10〜15%向上したという報告もあります。
ADR向上は大腸がん予防につながる可能性がある
さらに、大腸がん死亡リスクは約5%低下することも報告されています。ADRは単なる検査指標ではなく、患者さんの将来の生命予後に直結する数値です。
Corley DA, Jensen CD, Marks AR, et al.
Adenoma Detection Rate and Risk of Colorectal Cancer and Death.
N Engl J Med. 2014;370(14):1298–1306.
※2022年 JAMA誌(Schottinger JE et al.)の追試でも同様の関係が再確認されています。
AI内視鏡を導入している医療機関を選ぶポイント
AI搭載だけで医療機関を選ぶのではなく、以下も重要です。
-
1
消化器内視鏡専門医が検査を行うか
学会認定の専門医による検査は、AIの指摘を適切に判断するための前提条件です。
-
2
鎮静剤への対応があるか
苦痛を軽減できれば、より丁寧な観察が可能になり、結果的に検査精度の向上にもつながります。
-
3
丁寧な観察と観察時間の確保
推奨される観察時間(大腸の引き抜き時間6分以上など)が守られているかは、見落とし防止に直結します。
-
4
前処置・検査説明が十分か
大腸の前処置が不十分だと、どんなに高精度なAIでも病変を検出できません。事前説明の丁寧さは品質のバロメーターです。
-
5
拡大内視鏡や高画質機器の導入
AIシステムの性能は搭載機器の画質にも依存します。最新の高画質スコープとの組み合わせが理想的です。

まとめ|AI内視鏡は“第二の目”として期待されている
AI内視鏡(内視鏡AI)は、胃がん・大腸がんの早期発見を支える最新技術です。
特に大腸内視鏡検査では、
・ポリープ見逃し防止
・ADR向上
・大腸がん予防
への貢献が期待されています。
一方でAIは万能ではなく、あくまで医師を支援するシステムです。
大切なのは、「AI搭載」という言葉だけではなく、
・経験豊富な内視鏡専門医
・丁寧な観察
・適切な前処置
・高品質な検査体制
を総合的に見ることです。
萎縮性胃炎、便潜血陽性、大腸ポリープ既往、胃がん・大腸がんの家族歴がある方は、症状がなくても定期的な内視鏡検査をご検討ください。


記事監修:豊島区 おなかとおしりのクリニック 東京大塚
院長 端山 軍(MD, PhD Tamuro Hayama)
資格:日本消化器病学会専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
日本大腸肛門病学会専門医・指導医・評議員
日本外科学会専門医・指導医
日本消化器外科学会専門医・指導医
がん治療認定医
消化器がん治療認定医
帝京大学医学部外科学講座非常勤講師
元帝京大学医学部外科学講座准教授
医学博士 など
院長プロフィール