2026年4月17日
「食事のたびに胃がもたれる」「少し食べただけでお腹がいっぱいになる」「みぞおちが痛む」——このような症状が続いているのに、胃カメラで異常がないと言われたことはありませんか?
その原因として多いのが、機能性ディスペプシア(FD)です。これは“異常がない=問題ない”わけではなく、胃の働きの異常によって症状が出る病気です。
実際に、胃の症状で受診された方の約半数がこの病気とされており、決して珍しいものではありません。
重要なのは、本当に機能性なのかを見極めることです。胃がんや胃潰瘍などの病気を除外するためにも、適切な検査(胃カメラ)が必要になるケースがあります。
このコラムでは、症状・原因・治療をわかりやすく解説しながら、なぜ胃カメラが重要なのかを専門医の視点で説明します。

機能性ディスペプシアの症状
症状は食後の不快感として現れることが多いです。
機能性ディスペプシアの症状は、食事に関連して出現するのが特徴です。

・食後の胃もたれ
・少量で満腹になる(早期満腹感)
・みぞおちの痛みや不快感
・吐き気や胃の張り
これらの症状が繰り返し続く場合は、機能性ディスペプシアが疑われます。
機能性ディスペプシアの原因
機能性ディスペプシアは、胃カメラで異常がないにもかかわらず、胃の働きに問題が生じることで起こります。
原因は一つではなく、いくつかの要因が重なって症状が出ると考えられています。

主な原因
・胃の動きが弱くなる
・胃が刺激に敏感になる
・ストレスの影響
【専門解説】主な3つのメカニズム
機能性ディスペプシアでは、以下の3つが重要とされています。
| メカニズム | どんな状態? | 主な症状 |
|---|---|---|
| 胃の運動機能異常 | 食べ物が胃から十二指腸へ進むスピードが遅くなる、または食後に胃が十分に広がらない状態 |
食後のもたれ感 早期満腹感 |
| 内臓知覚過敏 | 胃の軽い刺激(伸展・胃酸・脂肪)に対して過剰に反応してしまう状態 |
少量の食事でも強い不快感 みぞおちの痛み |
| 脳腸相関の乱れ | ストレスや不安が脳と消化管の神経ネットワークを通じて胃の働きに影響する状態 |
ストレス時の症状悪化 不安・抑うつの合併 |
👉 これらが単独ではなく、複数重なって症状が出るのが特徴です。
「異常なし」と言われた方こそ注意|胃カメラで確認すべき理由
「以前、胃カメラで異常なしと言われた」という方も多くいらっしゃいます。
しかし、機能性ディスペプシアの診断では“本当に異常がないかを確認すること”が非常に重要です。
① 胃がん・胃潰瘍との鑑別
症状は胃がん・胃潰瘍・逆流性食道炎とよく似ています。
そのため、これらの病気を除外することが診断の前提になります。
👉 「以前大丈夫だった」では不十分です
年齢や経過によって状態は変化します。特に40歳以上やピロリ菌感染歴がある方は再評価が重要です。
② ピロリ菌感染の確認
ピロリ菌が関与している場合、機能性ディスペプシアとは別の病態として扱います。
👉 除菌により症状が改善するケースもあり、
診断と治療が大きく変わるポイントです。
※ Rome IV(2016)では、除菌で改善した場合は「ピロリ菌関連ディスペプシア」と分類
③ 正確な診断が治療を変える
機能性ディスペプシアは症状によってタイプが分かれます。
・食後型(PDS)
・痛み型(EPS)
👉 診断がつくことで、適切な薬を選択できるようになります
胃カメラで分かること
✅ ピロリ菌感染の有無
✅ 胃粘膜の状態(萎縮性胃炎など)
✅ 正確な診断につながる
機能性ディスペプシアの治療
治療は「薬+生活改善」が基本です。
薬物療法
胃酸分泌抑制薬(PPIなど)
・消化管運動改善薬
・漢方薬
生活改善
・脂っこい食事を控える
・少量ずつ食べる
・規則正しい生活
【専門解説】機能性ディスペプシアの診断と病態
ここからは、機能性ディスペプシアをより詳しく知りたい方へ向けた専門的な内容です。
診断の考え方や、症状が起こる仕組みについて解説します。
Rome IV基準による診断
機能性ディスペプシアは、国際的に「Rome IV基準(2016年)」に基づいて診断されます。
主なポイントは以下の通りです。
・食後のもたれ感
・早期満腹感
・心窩部痛
・心窩部灼熱感
👉 これらの症状が持続し、
胃カメラで異常がないことが診断の前提となります。
サブタイプ分類(治療に重要)
機能性ディスペプシアは2つに分けられます。
PDS(食後愁訴症候群)
→ 胃もたれ・早期満腹感
EPS(心窩部痛症候群)
→ みぞおちの痛み
👉 この分類は、治療薬の選択に直結します
病態生理(なぜ症状が出るのか)
主に以下の要因が関与します。
① 胃の運動機能異常
胃の動きや広がりが不十分
→ 早期満腹感・胃もたれ
② 内臓知覚過敏
通常では問題ない刺激を強く感じる
→ 痛み・不快感
③ 脳腸相関
ストレスが胃の働きに影響
→ 症状の悪化
④ ピロリ菌との関係
ピロリ菌感染がある場合、
除菌で症状が改善すれば別の病態(HpD)として扱います
👉 そのため、診断にはピロリ菌の確認が重要です
日本のガイドラインに基づく治療の流れ
日本消化器病学会ガイドラインでは、以下の流れが推奨されています。
・生活習慣の改善
・ピロリ菌検査・除菌
・薬物療法(PPI / アコチアミド など)
👉 胃カメラは診断の最初の重要ステップです
参考文献・ガイドライン
1.日本消化器病学会. 機能性消化管疾患診療ガイドライン2021-機能性ディスペプシア(FD)改訂第2版. 南江堂, 2021.
2.Stanghellini V, Chan FK, Hasler WL, et al. Gastroduodenal Disorders. Gastroenterology. 2016;150(6):1380–1392.
3.総合医科学研究所 臨床試験事業「機能性ディスペプシア」病態解説(胃排出遅延20〜40%、適応性弛緩障害40〜50%).
4.Tack J, Talley NJ, Camilleri M, et al. Functional gastroduodenal disorders. Gastroenterology. 2006;130(5):1466–1479.
まとめ
機能性ディスペプシアは、「異常がない」と言われても症状が続くつらい病気です。
しかしその一方で、胃がんや胃潰瘍などの病気が隠れている可能性もある症状でもあります。

そのため最も重要なのは、
👉 胃カメラで本当に異常がないかを確認することです。
「以前異常なしと言われたから大丈夫」と思っていても、
症状が続いている場合は再評価が必要です。
当院では、苦痛の少ない鎮静下胃カメラに対応しており、
検査後すぐに結果をご説明します。
👉 胃の不調が続いている方は、一度きちんと検査を受けることをおすすめします。
胃の不快感、一度きちんと調べてみませんか?
東京都豊島区(池袋・大塚・巣鴨)おなかとおしりのクリニック 東京大塚では、鎮静剤を使用した苦痛の少ない胃カメラ(上部内視鏡検査)を実施しています。機能性ディスペプシアをはじめ、胃の不調に関するご相談を受け付けています。

記事監修:豊島区 おなかとおしりのクリニック 東京大塚
院長 端山 軍(MD, PhD Tamuro Hayama)
資格:日本消化器病学会専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
日本大腸肛門病学会専門医・指導医・評議員
日本外科学会専門医・指導医
日本消化器外科学会専門医・指導医
がん治療認定医
消化器がん治療認定医
帝京大学医学部外科学講座非常勤講師
元帝京大学医学部外科学講座准教授
医学博士 など
院長プロフィール

