2026年3月18日
「下痢が続いていたら、便に血が混じった」「お腹が痛くて何度もトイレに行くうちに血便が出た」――このような症状があると、とても不安になると思います。
下痢と血便が同時に起こる場合、感染性腸炎のように比較的急性に起こる病気から、虚血性大腸炎、潰瘍性大腸炎、大腸がんなど早めの検査が必要な病気まで、原因は幅広く考えられます。「痔かもしれない」「一回だけだから様子を見よう」と自己判断するのは危険です。
このコラムでは、まず患者さん向けにわかりやすく、下痢と血便の見方や危険なサインを説明し、後半では原因となる病気、検査、治療まで専門的に整理して解説します。
① 下痢と血便とは?まず知っておきたいこと
下痢とは、便の水分量が増え、泥状便や水様便が繰り返し出る状態です。一般には急に起こるものを急性下痢、長く続くものを慢性下痢として考えます。急性下痢では感染性腸炎が多く、慢性下痢では炎症性腸疾患や大腸の病気が隠れていることがあります。
血便とは、便に血液が混じる状態です。鮮やかな赤い血が付く場合もあれば、暗赤色、粘液が混じる粘血便、黒っぽい便として出る場合もあります。血液の色や混ざり方は、出血している場所を考える手がかりになります。
ただし、見た目だけで病気を決めることはできません。痔による出血のように見えても、実際には大腸ポリープや大腸がん、炎症性腸疾患が見つかることもあります。正常な便に血液が混じることはないため、一度でも血便があれば受診を考えることが大切です。
下痢だけなら一時的な胃腸炎で済むこともありますが、血便が加わると「腸の粘膜に炎症や傷、出血が起きている」可能性が高くなります。特に腹痛、発熱、体重減少、貧血症状を伴う場合は放置しないでください。
ストレスだけで血便は出る?
ストレスは腸の動きを乱し、下痢や腹痛を起こすことがあります。いわゆる過敏性腸症候群(IBS)で下痢を繰り返す方もいます。しかし、IBSではっきり見える血便が出るのは典型的ではありません。ストレスがきっかけで症状が悪化したとしても、血便がある場合はほかの病気がないか確認が必要となります。
② 下痢と血便で受診すべき危険な症状
下痢と血便は、症状の組み合わせによっては急いで受診すべき状態です。以下に当てはまる場合は、できるだけ早く消化器内科受診を検討しましょう。
- 血便の量が多い、何度も出る、止まらない
- 強い腹痛がある
- 38℃以上の発熱を伴う
- 黒い便(タール便)が出る
- 暗赤色の血便が続く
- めまい、ふらつき、動悸、顔面蒼白がある
- 下痢と血便が数日続いている
- 体重減少や食欲低下がある
- 高齢の方、抗凝固薬を服用中の方、免疫が低下している方
特に大量出血、意識がぼんやりする、立てないほどのふらつき、冷や汗がある場合は、出血量が多かったり、循環動態が不安定になっていたりする可能性があります。
市販の下痢止めを先に飲んでもいい?
血便を伴う下痢では、安易に市販の下痢止めを使わないほうが安全です。細菌性腸炎、特に腸管出血性大腸菌感染症が疑われる場面では、止痢薬がかえって病状を悪化させる可能性があります。まずは水分を確保し、早めに医療機関を受診しましょう。
③ 下痢と血便の主な原因
下痢と血便が同時に起こるときは、「感染」「炎症」「血流障害」「腫瘍」「肛門病変」などを考えます。ここでは代表的な原因を整理します。
感染性腸炎
細菌やウイルスによる腸炎です。水様下痢が中心のこともありますが、細菌性腸炎では血便を伴うことがあります。食事のあとに急に発症した、家族や周囲にも胃腸症状がある、発熱や吐き気を伴う、といった場合に疑います。
虚血性大腸炎
大腸への血流が一時的に悪くなり、粘膜に炎症や出血が起こる病気です。中高年に多く、急な腹痛のあとに下痢と血便が出るのが特徴です。便秘、脱水、動脈硬化などが背景にあることがあります。
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に慢性的な炎症が起こる病気で、下痢や血便を繰り返すのが特徴です。 症状が続く場合には、早めの検査と治療が重要になります。
大腸の粘膜に慢性的な炎症が起こる炎症性腸疾患です。下痢、腹痛、粘血便を繰り返すことが多く、症状が続く、何度も再発する、若いころから便通異常がある、といった場合に疑います。
クローン病
口から肛門までの消化管のどこにでも炎症が起こりうる病気です。腹痛、下痢、体重減少、発熱、肛門のトラブルを伴うことがあり、血便が見られることもあります。比較的若い世代で発症することが多い病気です。
大腸ポリープ・大腸がん
大腸ポリープや大腸がんでも、血便や便通異常が起こることがあります。 特に40歳以上で血便が続く場合は、大腸の病気が隠れている可能性があるため注意が必要です。
→ 大腸ポリープについて詳しくはこちら
→ 大腸がんについて詳しくはこちら
痔(いぼ痔・切れ痔)
肛門から近い場所の出血なので鮮血になりやすく、紙につく、便の表面に付着する、排便時に痛みがある、といった特徴があります。ただし、痔がある人でも大腸の病気は起こりうるため、「痔持ちだから大丈夫」とは言えません。
④ 血便の色や状態でわかること
血便の色や混ざり方は、出血部位や病気を考えるヒントになります。受診時に「何色だったか」「便の表面についていたか、便全体に混じっていたか」を伝えると診断の助けになります。
肛門や直腸に近い場所からの出血を考えます。痔、裂肛、直腸炎、直腸ポリープなど。
大腸からの出血を考えます。虚血性大腸炎、憩室出血、潰瘍性大腸炎、大腸がんなど。
胃や十二指腸など上部消化管からの出血を示唆します。緊急性が高いことがあります。
血便の色と考えられる病気の目安
| 便の見た目 | 出血部位の目安 | 考えられる病気 |
|---|---|---|
| 鮮やかな赤い血 | 肛門・直腸 | 痔核、裂肛、直腸炎、直腸ポリープ |
| 暗赤色の血便 | 大腸 | 虚血性大腸炎、憩室出血、潰瘍性大腸炎、大腸がん |
| 粘液が混じる粘血便 | 大腸粘膜の炎症 | 潰瘍性大腸炎、感染性腸炎、直腸炎 |
| 黒くてねばつく便 | 胃・十二指腸など上部消化管 | 胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん、上部消化管出血 |
⑤ 下痢と血便のとき何科を受診する?
基本的には消化器内科・肛門科が第一選択です。下痢と血便の原因は腸だけでなく胃や十二指腸も関係することがあり、問診、血液検査、便検査、内視鏡検査まで一貫して進めやすいからです。
最初に受診する診療科として最もおすすめです。下痢、血便、腹痛、便潜血陽性などを幅広く診療します。
痔が強く疑われる場合には選択肢になります。ただし大腸の病気を除外する視点も重要です。
大量出血、黒色便、強い腹痛、脱水、ふらつきがある場合は救急受診を考えます。
- いつから下痢と血便が始まったか
- 便の色、量、回数
- 腹痛、発熱、吐き気、体重減少の有無
- 最近食べたもの、旅行歴、周囲の体調不良
- 飲んでいる薬(抗凝固薬、痛み止め、抗菌薬など)
- 大腸ポリープ・大腸がんの既往や家族歴
⑥ 病院で行う検査と原因疾患の見分け方
症状だけで原因を断定することは難しいため、必要に応じて検査を組み合わせて診断します。特に血便がある場合は、「どこから、なぜ出血しているか」を確認することが重要です。
便検査・血液検査
便検査では便潜血や便培養などを行い、感染性腸炎や出血の評価に役立てます。血液検査では炎症反応、貧血、脱水、腎機能などを確認し、重症度の判断にも使います。
腹部超音波検査・CT検査
腹痛が強い場合や、腸炎の広がり、ほかの腹部疾患との区別が必要な場合には、超音波検査やCTを行うことがあります。虚血性大腸炎や重症感染症が疑われる場面でも有用です。
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
大腸カメラは、下痢と血便の原因を調べるうえで非常に重要な検査です。大腸の粘膜を直接観察できるため、炎症、潰瘍、ポリープ、がん、出血部位を詳細に確認できます。必要に応じて組織を採取し、病理検査で正確に診断します。
「痛そうで心配」という方も多いですが、近年は鎮静剤を使って苦痛を抑えた検査が広く行われています。便潜血陽性、大腸がん家族歴、40歳以上で未検査、血便の反復などがある方では、大腸カメラの意義が特に大きいです。
主な原因疾患の特徴まとめ
| 疾患名 | 血便の特徴 | 主な症状 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 感染性腸炎 | 粘血便、水様便に血が混じる | 下痢、腹痛、発熱、吐き気 | 急に始まることが多い |
| 虚血性大腸炎 | 暗赤色の血便 | 急な腹痛(主に左下腹部)のあとに下痢・血便 | 中高年に多い |
| 潰瘍性大腸炎 | 粘血便 | 慢性的な下痢、腹痛 | 大腸内視鏡で粘膜面の炎症を確認 |
| 大腸がん | 便潜血陽性、血便 | 便通異常、体重減少、無症状のことも | 早期発見が重要 |
| 痔 | 鮮血が紙や便の表面につく | 排便時出血、肛門痛、違和感 | 大腸疾患の除外も必要 |
⑦ 下痢と血便の治療と予防
治療は原因によって大きく異なります。そのため、自己判断で薬を使うよりも、まず原因を見極めることが重要です。
原因ごとの治療
- 感染性腸炎:水分補給、整腸薬、必要に応じて抗菌薬。血便を伴う場合は止痢薬を慎重に扱います。
- 虚血性大腸炎:多くは腸を休める保存的治療で改善しますが、重症例では入院治療が必要です。
- 潰瘍性大腸炎・クローン病:炎症を抑える薬を用い、再燃予防も含めて継続管理します。
- 大腸ポリープ:大腸内視鏡検査施行時に切除できることがあります。
- 大腸がん:病期に応じて内視鏡治療、手術、薬物療法などを行います。
- 痔:軟膏、座薬、生活改善、必要に応じた処置や手術を行います。
日常生活でできる予防
- ・十分な水分をとり、便秘や脱水を防ぐ
- ・暴飲暴食を避け、脂っこいものや刺激物のとりすぎに注意する
- ・生肉や加熱不足の食品に注意し、食中毒を予防する
- ・排便時に強くいきみすぎない
- ・ストレス、睡眠不足、生活リズムの乱れを整える
- ・便潜血検査や大腸カメラなど、年齢やリスクに応じた検査を受ける
40歳以降は便潜血検査をきっかけに大腸の精密検査が必要になる場面が増えます。血便がある、便潜血陽性だった、家族歴がある、といった場合は大腸カメラ検査による精査が必要になる場合がございます。
よくある質問
まとめ|下痢と血便は自己判断せず早めの相談を
- ・下痢と血便が同時に起こる原因は、感染性腸炎、虚血性大腸炎、潰瘍性大腸炎、大腸がん、痔など幅広い
- ・血便の色や状態は手がかりになるが、見た目だけで病気は決められない
- ・大量出血、黒色便、強い腹痛、発熱、ふらつきがあれば早めの受診が必要
- ・基本は消化器内科を受診し、必要に応じて大腸カメラで原因を調べる
- ・一回だけの血便でも放置せず、特に40歳以降は大腸内視鏡検査を意識する
下痢と血便は、「たまたま腸の調子が悪かっただけ」で済むこともありますが、重要な病気のサインであることもあります。気になる症状があれば、早めにご相談ください。
下痢や血便でお困りの方は、お早めにご相談ください。
大腸カメラ検査のご予約も受け付けています。
※ 本記事の内容は作成時点の一般的な医学情報に基づいています。最新の診療方針については担当医にご確認ください。
