2026年2月11日
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、発熱や咳だけでなく、下痢の症状がみられることがあります。中には、下痢だけが続き、他の症状がほとんど出ないケースもあり、「急にお腹を壊したけれど、これがコロナなのか判断できない」と不安に感じる方も少なくありません。
ただし、下痢の原因はコロナだけではなく、ウイルス性胃腸炎など症状が似ている病気も多いため、見分けが難しいのが実情です。誤った自己判断により、受診や検査のタイミングを逃してしまうこともあります。
この記事では、コロナによる下痢の特徴や続く期間、胃腸炎との違いを整理しながら、自宅で様子を見てよい場合と、医療機関を受診すべきタイミングについて、わかりやすく解説します。

コロナと下痢の関係
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では、下痢が症状としてみられることがあります。発熱や咳といった呼吸器症状が目立たず、下痢などの消化器症状が先に現れたり、下痢だけが続いたりするケースも報告されています。そのため、「お腹の調子が悪いだけだから」と自己判断してしまうと、感染に気づくのが遅れることがあります。
一方で、下痢はコロナに特有の症状ではなく、ウイルス性胃腸炎など他の原因でも頻繁に起こります。重要なのは、下痢の有無だけで判断するのではなく、症状の経過や全身状態、他の症状の有無をあわせて考えることです。次の項目では、コロナによる下痢にみられやすい特徴について整理します。
コロナによる下痢の特徴
コロナによる下痢には、いくつか共通してみられやすい特徴があります。便は水っぽい状態になることが多く、回数が普段より増えることで気づくケースが少なくありません。腹痛は強くないことが多く、あっても軽度から中等度にとどまる傾向があります。
一般的な胃腸炎と比べると、激しい吐き気や嘔吐が目立たない点が一つの違いです。また、食事内容に思い当たる原因がないのに下痢が始まったり、同時期に周囲で風邪症状が流行していたりする場合は、コロナの可能性も考慮されます。
ただし、下痢の性状や回数だけで原因を判断することはできません。次の項目では、こうした下痢がどのくらいの期間続くのかについて整理します。
下痢以外に出やすい症状
下痢が続くと、「コロナなのか、ただの胃腸炎なのか」で迷う方が多くなります。 判断のヒントになるのが、下痢以外にどんな症状を伴っているかです。
| 症状の種類 | コロナでみられやすい傾向 | 胃腸炎でみられやすい傾向 |
|---|---|---|
| 発熱 | あり(軽度〜中等度) | あり(軽度〜中等度) |
| 倦怠感 | 強く出ることがある | 比較的軽い |
| 咳・喉の痛み | みられることがある | ほとんどみられない |
| 吐き気・嘔吐 | 目立たないことが多い | 比較的目立つ |
このように、呼吸器症状や強い全身のだるさを伴うかどうかは、考えるうえで一つのポイントになります。 ただし、症状の出方には個人差があり、これだけで原因を断定することはできません。 次の項目では、こうした症状がある場合に、どの時点で医療機関に相談すべきかを解説します。

自宅でできる対処法
症状が軽く、自宅で様子を見る場合は、無理をせず体を休めることが基本になります。 特に下痢があるときは、気づかないうちに脱水になりやすいため、 水分をこまめに補給することが最優先です。
水分補給のポイント
- 水やお茶だけでなく、経口補水液などを活用する
- 一度に大量に飲まず、少量ずつこまめに摂取する
食事の工夫
食事は無理にとる必要はありませんが、食べられる場合は 消化のよいものを選びましょう。
- おかゆ、うどんなど胃腸に負担の少ないもの
- 脂っこい食事、刺激物、アルコールは控える
市販薬について
市販薬は、自己判断で下痢止めを使用することはおすすめできません。 原因によっては症状が長引くこともあるため、使用する場合は 整腸剤などにとどめ、迷うときは医師や薬剤師に相談しましょう。
そのほかに意識したいこと
- 十分な睡眠と休養をとる
- 手洗いや換気など、基本的な感染対策を心がける
病院を受診すべきタイミング
近年の研究では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)において、下痢を含む消化器症状が比較的高い頻度でみられることが報告されています。
2020年から2022年にかけて発表された複数の研究を統合したメタアナリシスでは、COVID-19患者の約4人に1人に消化器症状がみられ、そのうち下痢は約15〜20%に認められたとされています。
さらに一部の解析では、下痢を伴う患者は、そうでない患者と比べて重症化する割合がやや高い可能性が示されています。これらの結果から、下痢は単なる付随症状ではなく、全身状態を評価するうえで注意すべき所見の一つと考えられています。
そのため、下痢が続く場合や、他の症状を伴う場合には、自己判断せず医療機関に相談し、適切な評価を受けることが重要です。
下痢があっても、症状が軽く、数日で改善していく場合は自宅で様子を見ることも可能です。ただし、一定のサインがみられる場合は、早めに医療機関へ相談することが重要です。
特に注意したいのは、下痢が3日以上続く場合や、発熱・強い倦怠感・喉の痛み・咳などの症状を伴う場合です。また、周囲に新型コロナウイルス感染症の陽性者がいる、あるいは感染の可能性がある環境に心当たりがある場合も、自己判断せず相談することをおすすめします。
水分が十分にとれない、尿量が減っている、立ちくらみがあるなど、脱水が疑われる症状があるときも受診の目安になります。高齢の方や基礎疾患のある方、妊娠中の方は、症状が軽くても早めに医療機関へ連絡しましょう。
「様子を見てよいのか」「検査を受けるべきか迷う」と感じた時点で、一度相談することが大切です。適切なタイミングで受診することで、安心して療養につなげることができます。
下痢が続いて「コロナかもしれない」「このまま様子を見てよいのか」と迷うときは、 一人で判断せず、医療機関に相談することが大切です。
当院では、消化器症状を含めた体調変化について、 一人ひとりの状況を丁寧に伺いながら診察を行っています。 症状の経過や生活背景も踏まえ、必要に応じて検査や今後の対応について わかりやすくご説明します。
「受診すべきか迷っている」「検査が必要か知りたい」といった段階でも、 お気軽にご相談ください。患者さんに寄り添いながら、 安心して次の行動を選べるようサポートいたします。
参考文献:Dhakal S, Charoen P, Pan-ngum W, et al.
Severity of COVID-19 in Patients with Diarrhoea: A Systematic Review and Meta-Analysis.
Tropical Medicine and Infectious Disease. 2023;8(2):84.
doi:10.3390/tropicalmed8020084

監修:豊島区 おなかとおしりのクリニック 東京大塚
院長 端山 軍(MD, PhD Tamuro Hayama)
資格:日本消化器病学会専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
日本大腸肛門病学会専門医・指導医・評議員
日本外科学会専門医・指導医
日本消化器外科学会専門医・指導医
がん治療認定医
帝京大学医学部外科学講座非常勤講師
元帝京大学医学部外科学講座准教授
医学博士 など
院長プロフィール