2026年3月24日
胃腸炎の主な症状は下痢・嘔吐・腹痛・発熱です。多くは数日で回復しますが、血便・高熱・脱水症状がある場合は早めの受診が必要です。
この記事では、ウイルス性・細菌性・非感染性の違い、危険なサイン、治療や食事の注意点まで専門医が分かりやすく解説します。

胃腸炎の症状|主な症状一覧
胃腸炎は胃・小腸・大腸に炎症が起こる病気で、次のような症状が単独または重なって現れます。
| 症状 | 特徴 |
|---|---|
| 下痢 | 水のような便が何度も出ます。血便がある場合は注意が必要です。 |
| 嘔吐・吐き気 | 突然始まることが多く、ノロウイルスでは激しい嘔吐が目立つことがあります。 |
| 腹痛 | みぞおち(心窩部)、へそ周辺や下腹部に差し込むような痛みが出ることがあります。 |
| 発熱 | 38℃前後の発熱がみられることがありますが、 熱が出ない場合もあります。 |
| 全身倦怠感・食欲不振 | 脱水や炎症に伴って、だるさや食欲低下がみられることがあります。 |
「下痢や嘔吐はあるが熱がない」という場合でも、ウイルス性胃腸炎のことがあります。
胃腸炎における種類別の症状の違い(ウイルス性・細菌性・非感染性)
胃腸炎は原因によって症状の出方に違いがあります。ただし、症状だけで原因を完全に区別することは難しいです。あくまで一般的な傾向として、次のような違いがあります。
| 種類 | 症状の特徴 | よくみられる症状の組み合わせ | 経過の傾向 |
|---|---|---|---|
| ウイルス性 | 吐き気や嘔吐が強く出ることが多い | 嘔吐 → 下痢の順で起こることが多い | 比較的短期間で改善することが多い |
| 細菌性 | 腹痛が強く出ることがある | 下痢・腹痛が中心で血便を伴うことがある | 症状が数日以上続くことがある |
| 非感染性 | 腹痛や下痢が中心 | 嘔吐が目立たない場合もある | 原因により経過はさまざま |
ウイルス性胃腸炎ではノロウイルス(冬に流行)やロタウイルス(乳幼児に多い)が代表的で、嘔吐から始まることが多いのが特徴です。
一方、細菌性胃腸炎は生肉や加熱不十分な食品が原因になることが多く、血便や高熱を伴う場合は細菌感染を疑います。
非感染性胃腸炎は薬剤、アルコール、ストレスなどが原因で起こり、人にうつることはありません。
胃腸炎のすぐに受診すべき症状
胃腸炎の多くは自然に回復しますが、次のような症状がある場合は早めの受診が必要です。
- ・血便、または嘔吐物に血が混じる
- ・38℃以上の高熱が続く
- ・嘔吐が続き、水分がほとんど取れない
- ・口の乾き・尿が半日以上出ない(脱水のサイン)
- ・激しい腹痛が続く、または痛みが強くなっていく
- ・乳幼児・高齢者・妊婦で症状が強い
特に乳幼児や高齢者では脱水が進みやすいため、症状が強い場合は早めの受診が重要です。
胃腸炎の原因
胃腸炎は、ウイルスや細菌などの感染、または薬剤・アルコールなどの刺激によって胃や腸の粘膜に炎症が起こることで発症します。原因は大きく 感染性胃腸炎 と 非感染性胃腸炎 に分けられます。
感染性胃腸炎
感染性胃腸炎は、ウイルスや細菌が体内に入ることで起こります。
- ・ウイルス(ノロウイルス、ロタウイルスなど)
- ・細菌(カンピロバクター、サルモネラなど)
- ・汚染された食品や手指からの感染
非感染性胃腸炎
感染以外の原因でも胃腸炎のような症状が起こることがあります。
- ・薬剤(抗生物質、鎮痛薬など)
- ・アルコールの過剰摂取
- ・食べ過ぎや刺激物
- ・ストレスや自律神経の乱れ
胃腸炎の治療法と自宅でのケア
胃腸炎の治療は、原因や症状の強さによって異なります。多くの場合は数日で自然に改善するため、水分補給などの対症療法が中心となります。脱水や症状が強い場合には、薬や点滴治療が必要になることもあります。
胃腸炎の基本的な治療方針
ウイルス性胃腸炎には特効薬はなく、対症療法が中心になります。
細菌性胃腸炎では、原因となる細菌に応じて抗菌薬が使用されることがあります。
- ・水分・電解質補給:経口補水液を少量ずつ補給。脱水が強い場合は点滴治療を行います
- ・整腸薬:ビフィズス菌・乳酸菌製剤などで腸内環境を整えます
- ・制吐薬・鎮痙薬:嘔吐や腹痛が強い場合に使用します
- ・抗菌薬:細菌性胃腸炎(カンピロバクター、サルモネラなど)に使用されることがあります
専門的な病態解説
急性胃腸炎では、腸管粘膜への直接侵襲や毒素産生により腸上皮細胞のTight junction(細胞同士の結合構造)が破綻します。
その結果、腸管内への水分・電解質の分泌が増加する分泌性下痢や、腸管での吸収が低下する浸透圧性下痢が生じます。
重症例では
・低ナトリウム血症
・低カリウム血症
などの電解質異常を伴うことがあり、血液検査による評価が必要になる場合があります。
診断は問診や便性状の確認に加え
・便培養
・迅速抗原検査(ノロ・ロタ)
・CT
などを状況に応じて行います。
胃腸炎のときの食事|食べてよいもの・避けるもの
胃腸炎では、胃や腸に負担をかけない食事を心がけることが大切です。症状が強いときは無理に食べず、まず水分補給を優先します。
| 食べてよいもの | 控えたほうがよいもの |
|---|---|
| ・経口補水液 ・おかゆ ・うどん(よく煮たもの) | ・生もの(刺身など) ・半熟卵 |
| ・白身魚 ・豆腐 ・柔らかく煮た野菜 | ・脂っこい食事 ・揚げ物 |
| ・バナナ ・リンゴ(すりおろし) | ・アルコール ・炭酸飲料 |
嘔吐が続く場合は、固形物を無理に食べる必要はありません。まずは水分補給を行い、症状が落ち着いてきたら消化のよい食事を少量ずつ再開します。
自宅での注意点
- ・下痢止め薬の自己判断での使用は避ける(病原体の排出を妨げる場合があります)
- ・手洗いを徹底し、家庭内での感染拡大を防ぐ
- ・症状が悪化する、または長引く場合は医療機関を受診する
胃腸炎が長引く場合は、内視鏡検査を
胃腸炎の症状が長引く場合は、潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患の可能があります。症状が長引く場合は、内視鏡検査を受けましょう。


下痢・嘔吐・腹痛が続くときはご相談ください
血便、高熱、強い腹痛、脱水症状がある場合は、単なる胃腸炎ではないこともあります。 症状が続くときや不安があるときは、早めの受診をご検討ください。
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記事監修:豊島区 おなかとおしりのクリニック 東京大塚
院長 端山 軍(MD, PhD Tamuro Hayama)
資格:日本消化器病学会専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
日本大腸肛門病学会専門医・指導医・評議員
日本外科学会専門医・指導医
日本消化器外科学会専門医・指導医
がん治療認定医
消化器がん治療認定医
帝京大学医学部外科学講座非常勤講師
元帝京大学医学部外科学講座准教授
医学博士 など
院長プロフィール