2025年12月01日

「突然胃が痛い…これって大丈夫?」胃痛は日本人の約7割が経験する身近な症状ですが、放置すると重大な病気のサインを見逃す可能性があります。
本記事では、医学博士監修のもと、胃痛の原因から危険な症状の見分け方、自宅でできる対処法、病院を受診すべきタイミングまで、医学的根拠に基づいて詳しく解説します。「今すぐ確認すべき症状チェックリスト」で、あなたの胃痛が緊急性の高いものかどうかを判断できます。

突然の胃痛は何が起きている?まず確認すべき症状リスト
突然お腹の上あたりがキリキリ・ズキズキと痛むと、不安を強く感じます。まずは「どのような痛みか」「どのくらい続いているか」を整理することで、危険な胃痛かどうかを判断しやすくなります。ここでは、医療現場で実際に患者さんが訴える代表的な症状をわかりやすくまとめます。
まず確認すべきポイント
- 痛みの場所は「みぞおち」か?
- 痛みは持続か、波があるか?
- 食事・ストレス・姿勢で変化するか?
- 初めての痛みか、繰り返しているか?
よくみられる胃痛の種類
- キリキリ痛む:胃酸過多や急性胃炎でよくみられる痛み。
- ズキズキする痛み:胃潰瘍など、粘膜が深く傷つく時に起こりやすい。
- 重たい・もたれる感じ:胃の動きが低下している可能性。
- 差し込むような痛み:一時的な痙攣やストレスが関与することも。
- 朝だけ胃が痛む:夜間の胃酸逆流や空腹時の胃酸分泌が影響。

【今すぐ確認】胃痛の緊急度チェックリスト
⚠️ 緊急受診が必要な症状
- ☑️ 突然の激しい痛み(今まで経験したことがないレベル)
- ☑️ 冷や汗を伴う強い痛み
- ☑️ 吐血または黒色便(コールタール状の便)
- ☑️ 持続する嘔吐で水分が取れない
- ☑️ 腹部の硬直(お腹を押すと硬く、痛みが増す)
- ☑️ 意識がもうろうとする
こうした情報は、医療機関を受診する際も診断の大きな手がかりになります。
次の項目では、これらの症状を引き起こす「突然の胃痛の原因」をわかりやすく解説します。
突然胃が痛くなる原因|ストレス・食べ過ぎから病気まで幅広く解説
胃痛の原因は多岐にわたります。ここでは、日常的によくある原因から注意が必要な病気まで、症状の特徴とともに解説します。
💡 胃痛の主な原因5つ
😰 1. ストレス性の胃痛(機能性ディスペプシア)
ストレスや自律神経の乱れにより、胃の働きが低下して起こる胃痛です。
✓ 特徴:
- 検査では異常が見つからない
- キリキリした痛みや胃もたれ
- 朝や空腹時に痛むことが多い
🍔 2. 食生活の乱れ
暴飲暴食、刺激物の過剰摂取、早食いなどが胃に負担をかけます。
⚠️ 原因となる食べ物:
- 辛いもの(唐辛子、わさび)
- 脂っこいもの(揚げ物、肉類)
- カフェイン(コーヒー、エナジードリンク)
- アルコール
🔥 3. 胃炎(急性・慢性)
胃粘膜に炎症が起きている状態です。ピロリ菌感染や薬剤が原因のこともあります。
⚡ 4. 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
胃酸により胃や十二指腸の粘膜が深くえぐれた状態です。放置すると出血や穿孔(胃に穴が開く)のリスクがあります。
🔄 5. 逆流性食道炎
胃酸が食道に逆流し、胸やけや胃痛を引き起こします。
その他の原因については、「胃痛の背景にある主な病気」で詳しく解説します。
自宅でできる胃痛の治し方|今すぐできる応急処置と生活の工夫
突然の胃痛が起きたとき、多くの方が「病院へ行くべき?」「少し様子を見ても大丈夫?」と迷います。まずは自宅でできる安全な対処法を試し、痛みが軽減するか確認することが役立ちます。ここでは医学的に推奨される、体への負担が少ない応急処置をまとめました。

🏥 今すぐできる胃痛の応急処置
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🔥
体を温めるカイロや湯たんぽでお腹を温めると、胃の緊張が和らぎ痛みが軽くなることがあります。 |
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🚫
刺激の強い食べ物・飲み物を控えるコーヒー、アルコール、辛いものは胃酸分泌を増やし痛みを悪化させる可能性があります。 |
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🥣
消化にやさしいものを少量ずつおかゆ・スープなど、胃に負担をかけにくい食事が適しています。 |
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😌
ゆっくり休むストレス性胃痛では、休息で痛みが改善するケースがよくみられます。 |
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🧘
前かがみ姿勢は避ける胃が圧迫されるため、背すじを軽く伸ばした姿勢が望ましいです。 |
💡 ポイント: 応急処置を試しても症状が改善しない場合や、激しい痛みが続く場合は、すぐに医療機関を受診してください。
💊 市販薬の選び方
⚠️ 市販薬使用時の注意点
- 複数の胃薬を同時に服用する際は、薬剤師に相談しましょう
- 妊娠中・授乳中の方は使用前に医師に確認が必要です
- 他の薬を服用中の方は、飲み合わせに注意してください
💡 薬剤師に相談するメリット: ドラッグストアの薬剤師は、あなたの症状に最適な市販薬を提案してくれます。気軽に相談してみましょう。
すぐ病院へ行くべき危険な胃痛|チェックリストで緊急度を判断
胃痛の中には、命に関わる重大な病気のサインである場合があります。以下のチェックリストで、あなたの症状が危険なレベルかどうかを確認してください。
🏥 緊急度レベル別:病院受診の目安
🚨 レベル3:今すぐ救急車を呼ぶ(119番)
以下の症状は、胃穿孔(胃に穴が開く)、消化管出血、心筋梗塞などの可能性があります。
- 突然の激痛で動けない
- 吐血(鮮血またはコーヒー残渣様)
- 黒色便(タール便)が出た
- 顔面蒼白、冷や汗、血圧低下
- 意識障害
⚠️ レベル2:当日中に医療機関を受診
- 痛みが6時間以上続いている
- 繰り返し嘔吐し、水分が取れない
- 38℃以上の発熱を伴う
- 右上腹部の強い痛み(胆石・胆嚢炎の疑い)
- 背中まで突き抜ける痛み(膵炎の疑い)
ℹ️ レベル1:数日以内に受診を検討
- 1週間以上、胃痛が続く
- 体重が急激に減少している(1ヶ月で5kg以上)
- 食欲不振が2週間以上続く
- 空腹時や夜間に痛みが悪化する
💡 判断に迷ったら: 緊急度の判断に迷う場合は、#7119(救急相談センター)に電話して相談することもできます。
胃痛の背景にある主な病気|胃炎・胃潰瘍・逆流性食道炎・機能性ディスペプシア
ここからは、胃痛を引き起こす代表的な疾患について、医学的な視点から詳しく解説します。症状の特徴を理解することで、早期発見・早期治療につながります。
1. 急性胃炎
定義: 胃粘膜に急性の炎症が起こった状態。
原因:
・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の使用
・アルコールの大量摂取
・ストレス(手術後、重症疾患時)
症状:
・心窩部痛(みぞおちの痛み)
・悪心・嘔吐
・食欲不振
治療: プロトンポンプ阻害薬(PPI)による胃酸分泌抑制が基本です。
2. 慢性胃炎
定義: 胃粘膜の慢性的な炎症。日本人の約50%がピロリ菌感染による慢性胃炎を有しています。
分類:
| 分類 | 原因 | 特徴 |
|---|---|---|
| A型胃炎 | 自己免疫 | 胃体部に萎縮が起こる |
| B型胃炎 | ピロリ菌感染 | 日本人に最多、胃がんリスク上昇 |
| C型胃炎 | 薬剤性・化学物質 | NSAIDsや胆汁逆流が原因 |
診断: 内視鏡検査が必須。萎縮の程度により胃がんリスクを評価します。
3. 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
定義: 胃酸とペプシンにより、粘膜が筋層まで欠損した状態。
発症メカニズム:
・攻撃因子(胃酸・ペプシン)と防御因子(粘液・血流)のバランス崩壊
・ピロリ菌感染が約70%、NSAIDs使用が約20%を占める

症状の違い:
| 部位 | 痛むタイミング | 特徴 |
|---|---|---|
| 胃潰瘍 | 食後30分〜1時間 | 食事で痛みが増す |
| 十二指腸潰瘍 | 空腹時・夜間 | 食事で痛みが軽減 |
合併症:
・出血(吐血・下血)
・穿孔(胃壁に穴が開く)
・幽門狭窄(胃の出口が狭くなる
4. 逆流性食道炎(GERD)
定義: 胃酸が食道に逆流し、食道粘膜に炎症を起こす疾患。日本人の有病率は約10〜20%。
危険因子:
・肥満(腹圧上昇)
・食道裂孔ヘルニア
・脂肪食の過剰摂取
・就寝前の食事
症状:
・胸やけ(焼けるような不快感)
・呑酸(酸っぱい液体が上がってくる)
・胸痛(心筋梗塞との鑑別が重要)
診断: 内視鏡検査でロサンゼルス分類に基づき重症度を評価します(グレードA〜D)。
5. 機能性ディスペプシア(FD)
定義: 内視鏡検査で器質的異常がないにもかかわらず、慢性的な上腹部症状を呈する疾患。
診断基準(Rome IV基準): 以下の症状が1つ以上あり、6ヶ月以上前から存在し、最近3ヶ月間症状がある場合。
・食後のもたれ感
・早期満腹感
・心窩部痛
・心窩部灼熱感
病態生理:
・胃の運動機能障害(胃排出遅延、胃適応性弛緩障害)
・内臓知覚過敏
・精神心理的要因(不安・うつ)
6. その他の重要疾患
胃がん:
早期は無症状が多い
進行すると体重減少、貧血、嚥下困難が出現
日本人のピロリ菌感染率低下により減少傾向
胃アニサキス症:
生魚摂取後2〜8時間で激しい腹痛
内視鏡で虫体を摘出
詳しくは、胃アニサキス症をご参照ください。
急性膵炎:
アルコール過飲・胆石が主因
上腹部から背中に突き抜ける激痛
血清アミラーゼ・リパーゼ上昇
消化器病学会:胃がんについて
胃痛が起こるメカニズム|胃酸・自律神経・粘膜炎症の医学的解説
胃痛が起こる背景には、単なる「食べ過ぎ」だけではなく、胃酸の量・胃粘膜の状態・自律神経の働きが複雑に関係しています。ここでは、医学的に明らかになっている胃痛発生の仕組みを整理し、「なぜ痛みとして感じるのか」を専門的に解説します。

胃の生理学的構造
胃は、噴門部・胃体部・胃角部・幽門部の4つに区分されます。粘膜は以下の3層構造です。
- 粘液層:胃酸から粘膜を保護
- 上皮細胞層:粘液・重炭酸イオンを分泌
- 固有層:血管・リンパ管が豊富
痛みが発生する3つのメカニズム
1. 胃酸による粘膜障害
正常な防御機構:
- 粘液・重炭酸バリア
- プロスタグランジンによる粘膜血流維持
- 細胞の修復・再生能力
障害時: 胃酸(pH 1〜2の強酸)が粘膜に直接作用し、水素イオンが侵入することで細胞が破壊されます。これにより知覚神経(C線維、Aδ線維)が刺激され、痛みとして認識されます。
関与する物質:
- プロスタグランジン(PG):粘膜保護作用
- ロイコトリエン:炎症促進
- サブスタンスP:痛覚伝達
2. 自律神経の失調
交感神経優位時:
- 胃の血流減少
- 胃酸分泌の減少
- 胃運動の抑制
副交感神経優位時:
- 胃酸分泌の亢進
- 胃運動の促進
ストレス状態では、視床下部-下垂体-副腎系(HPA軸)が活性化し、コルチゾールが分泌されます。これが慢性的に続くと、胃粘膜の防御機能が低下し、痛みが生じやすくなります。
3. 炎症性サイトカインの関与
ピロリ菌感染や薬剤性障害により、炎症性サイトカイン(IL-1β、IL-6、TNF-α)が放出されます。
炎症カスケード:
- 好中球・マクロファージの浸潤
- 活性酸素種(ROS)の産生
- 組織障害と痛覚受容体の感作
- 中枢性感作(脊髄後角での痛覚増幅)
内臓痛の特殊性
胃痛は「内臓痛」に分類され、以下の特徴があります。
| 特徴 | 説明 |
|---|---|
| 局在不明瞭 | 「どこが痛いか正確にわからない」 |
| 関連痛 | 背部や左肩に放散することがある |
| 自律神経症状 | 悪心・嘔吐・冷汗を伴う |
これは、内臓求心性神経が少なく、複数の臓器が同じ脊髄レベルで中枢に情報を送るためです。
症状タイプ別に疑われる原因|キリキリ痛む・ズキズキ・朝だけ痛い場合など
胃痛の「痛み方」や「タイミング」から、原因疾患をある程度推測することができます。ここでは、症状パターン別に疑われる疾患を解説します。
痛み方による分類
1. キリキリした鋭い痛み
疑われる疾患:
- 急性胃炎
- 胃潰瘍の活動期
- 胃痙攣(ストレス性)
特徴: 差し込むような痛みで、持続時間は数分〜数時間。空腹時に悪化することが多い。
2. ズキズキする拍動性の痛み
疑われる疾患:
- 胃粘膜の炎症・びらん
- 血管性の痛み(まれ)
特徴: 心拍に同期するような痛み。炎症部位の血流増加が原因と考えられます。
3. 重苦しい鈍痛・もたれ感
疑われる疾患:
- 機能性ディスペプシア
- 慢性胃炎
- 胃下垂
特徴: 食後に増悪し、げっぷや膨満感を伴うことが多い。胃の運動機能低下が背景にあります。
4. 焼けるような痛み(灼熱感)
疑われる疾患:
- 逆流性食道炎
- 胃酸過多症
特徴: 前胸部〜心窩部にかけての灼熱感。就寝時や前かがみの姿勢で悪化します。
発症タイミングによる分類
朝だけ痛む場合
疑われる原因:
- 空腹時の胃酸過多
- 十二指腸潰瘍
- ストレス性胃炎
メカニズム: 夜間の胃酸分泌により、朝方に胃酸の影響が最大化します。
対策:
- 就寝前の軽食(牛乳、バナナなど)
- 枕を高くして就寝
食後すぐに痛む場合
疑われる原因:
- 胃潰瘍
- 急性胃炎
- 胃がん(進行期)
食後30分以内の痛みは胃潰瘍を示唆します。
空腹時・夜間に痛む場合
疑われる原因:
- 十二指腸潰瘍(最も典型的)
- 機能性ディスペプシア
特徴: 食事により痛みが軽減する(food relief)。これは食物が胃酸を中和するためです。
運動時・体位変換時に痛む場合
疑われる原因:
- 逆流性食道炎
- 胃下垂
- 腹部ヘルニア
随伴症状からの鑑別
| 随伴症状 | 疑われる疾患 | 緊急度 |
|---|---|---|
| 吐血・黒色便 | 消化性潰瘍出血、胃がん | 🚨高 |
| 持続する嘔吐 | 幽門狭窄、腸閉塞 | 🚨高 |
| 発熱 | 急性胃炎、胆嚢炎、膵炎 | ⚠️中 |
| 体重減少 | 胃がん、慢性膵炎 | ⚠️中 |
| げっぷ・膨満感 | 機能性ディスペプシア | ℹ️低 |
年齢・性別による特徴
若年者(20〜30代):
- 機能性ディスペプシアが最多
- ストレス性胃炎も多い
中年以降(40代〜):
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍が増加
- 胃がんリスクが上昇(特に50代以降)
女性に多い:
- 機能性ディスペプシア
- 逆流性食道炎(妊娠・出産歴のある方)
男性に多い:
- 十二指腸潰瘍
- アルコール性胃炎
胃痛の検査・治療方法|内視鏡・薬・生活改善まで医学的に詳しく解説
胃痛の診断には、胃内視鏡検査など適切な検査が不可欠です。ここでは、医療機関で行われる検査方法と、エビデンスに基づいた治療法を詳しく解説します。

診断のための検査
1. 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
適応:
- 持続する胃痛
- 40歳以上の初発症状
- 警告症状(体重減少、吐血など)がある場合
検査でわかること:
| 所見 | 診断 |
|---|---|
| 発赤・びらん | 急性胃炎 |
| 萎縮性変化 | 慢性胃炎 |
| 潰瘍形成 | 胃潰瘍・十二指腸潰瘍 |
| 腫瘤性病変 | 胃がん・胃リンパ腫 |
| 粘膜断裂 | 逆流性食道炎 |
生検: 疑わしい部位から組織を採取し、病理診断を行います。ピロリ菌の検出も同時に実施可能です。
2. ヘリコバクター・ピロリ菌検査
検査方法:
| 方法 | 侵襲性 | 特徴 |
|---|---|---|
| 尿素呼気試験 | なし | 感度・特異度とも95%以上 |
| 便中抗原検査 | なし | 簡便、除菌判定にも使用 |
| 血清抗体検査 | なし | スクリーニングに有用 |
| 迅速ウレアーゼ試験 | あり | 内視鏡時に実施 |
| 組織鏡検 | あり | 確定診断 |
除菌治療: プロトンポンプ阻害薬(PPI)+ 2種類の抗菌薬を7日間投与。一次除菌の成功率は約75%、二次除菌まで行うと95%以上です。
3. 血液検査
評価項目:
- CBC(貧血の有無)
- 炎症マーカー(CRP、白血球数)
- 肝機能・腎機能
- 腫瘍マーカー(CEA、CA19-9):胃がん疑い時
4. 腹部超音波検査・CT検査
適応:
- 胆石・胆嚢炎の除外
- 膵炎の診断
- 腫瘍性病変の評価
エビデンスに基づく治療法
1. 薬物療法
プロトンポンプ阻害薬(PPI):
| 薬剤名 | 用法 | 特徴 |
|---|---|---|
| オメプラゾール | 20mg 1日1回 | 最も歴史がある |
| ランソプラゾール | 30mg 1日1回 | 日本で開発 |
| エソメプラゾール | 20mg 1日1回 | 効果持続時間が長い |
| ボノプラザン | 20mg 1日1回 | 新世代、ピロリ除菌に有効 |
作用機序: 壁細胞のプロトンポンプを阻害し、胃酸分泌を強力に抑制。
H2受容体拮抗薬(H2ブロッカー):
- ファモチジン、ラニチジンなど
- PPIより効果は弱いが、即効性がある
- 市販薬としても入手可能
粘膜保護薬:
- スクラルファート:潰瘍面を物理的に保護
- レバミピド:粘液産生促進、プロスタグランジン合成促進
- エカベトナトリウム:粘膜修復促進
消化管運動機能改善薬:
- モサプリド:セロトニン5-HT4受容体作動薬
- ドンペリドン:ドパミンD2受容体拮抗薬
- 適応:機能性ディスペプシアの食後愁訴症候群
2. ピロリ菌除菌療法
一次除菌(7日間):
- PPI(または PPCAB)
- アモキシシリン 750mg×2
- クラリスロマイシン 200mg×2
二次除菌(一次不成功時): クラリスロマイシンをメトロニダゾールに変更。
3. 内視鏡的治療
適応:
- 早期胃がん:内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
- 出血性潰瘍:クリップ止血、高周波凝固
- 食道静脈瘤:内視鏡的結紮術(EVL)
4. 生活習慣の改善(エビデンスレベルA)
食事療法:
- 1日3食、規則正しい時間に摂取
- よく噛む(1口30回が目安)
- 就寝3時間前までに食事を終える
- 刺激物(香辛料、カフェイン、アルコール)を控える
ストレス管理:
- 認知行動療法(CBT):機能性ディスペプシアに有効
- マインドフルネス瞑想
- 適度な運動(週150分の有酸素運動)
禁煙: 喫煙は胃粘膜血流を低下させ、潰瘍治癒を遅延させます。禁煙により潰瘍再発率が50%減少します。
治療効果のモニタリング
治療目標:
- 症状の消失・改善
- 内視鏡的な潰瘍治癒
- ピロリ菌の除菌成功
フォローアップ:
- PPI治療:4〜8週間後に効果判定
- 除菌治療:終了4週間以降にピロリ菌陰性を確認
- 胃潰瘍:内視鏡で瘢痕化を確認(悪性除外のため)
難治例への対応
PPI抵抗性GERD:
- PPI増量(1日2回投与)
- PPCAB(ボノプラザン)への変更
- 外科的治療(噴門形成術)の検討
機能性ディスペプシア難治例:
- 抗うつ薬(三環系、SSRI)の併用
- 漢方薬(六君子湯、半夏瀉心湯)
- 心療内科への紹介
よくある質問(FAQ)
Q1. 胃がキリキリ痛むのは何が原因ですか?
刺激物(辛い物・コーヒー・アルコール)、寝不足、緊張がきっかけになることもあります。
頻繁に起こる場合は胃カメラで粘膜の状態を確認することが大切です。
Q2. ズキズキと刺すように痛む場合は何を疑いますか?
空腹時の痛みが強い、黒色便がある場合は早めに受診してください。
Q3. 朝だけ胃が痛いのはなぜですか?
・逆流性食道炎の悪化
・朝のストレスで自律神経が乱れる
・朝食後に痛む → 機能性ディスペプシア
などが原因となります。長期化する場合は内視鏡検査が有効です。
Q4. 食後に胃が痛くなるのは何が原因ですか?
胃に炎症があると、食べ物が触れるだけで痛みを感じます。
Q5. ストレスで胃が痛くなるのは本当にありますか?
これに該当する疾患として機能性ディスペプシアがあります。
Q6. 胃が痛いときは何科を受診すべきですか?
吐血・黒色便・強い持続痛がある場合は、早急な受診が必要です。
Q7. 左側(または右側)だけお腹が痛むのは大丈夫ですか?
右側だと虫垂炎、憩室炎などが原因となることがあります。お腹の痛みが続くときは消化器内科での精査を推奨します。
Q8. 胃痛と背中の痛みが同時にあるのは危険ですか?
これは早期受診が必要なサインです。
Q9. 息を吸うと胃が痛いのはなぜですか?
胃炎・逆流性食道炎のほか、肋間筋の炎症など別疾患の場合もあります。
Q10. 横になると胃が痛くなるのは逆流性食道炎ですか?
枕を高めにする、就寝前3時間は食事を控えるなどが改善策です。
Q11. 市販薬で治る胃痛と、病院に行くべき胃痛の違いは?
・軽い胃酸過多
・一時的なストレス性胃痛
以下の場合は病院へ:
・数日続く痛み
・ズキズキした強い痛み
・吐血・黒色便
・食欲低下・体重減少
Q12. 胃痛が続くとき、どれくらいで受診すべきですか?
危険症状(出血、激痛、発熱)がある場合はすぐに受診してください。
📋 まとめ
胃痛は多くの人が経験する一般的な症状ですが、その原因は軽度のものから命に関わる重篤な疾患まで様々です。
✅ 本記事の重要ポイント
🚨 突然の激痛、吐血、黒色便は緊急受診が必要
⏱️ 軽症でも1週間以上続く場合は医療機関へ
🔍 ストレス、食生活、ピロリ菌が主な原因
🏠 自宅での応急処置は「安静・保温・水分補給」
🔬 内視鏡検査で正確な診断が可能
💊 PPIやピロリ菌除菌で多くの胃痛は改善
胃痛でお困りの際は、本記事のチェックリストを参考に、
適切なタイミングで医療機関を受診してください。
早期発見・早期治療が、健康な胃を保つ鍵です。

監修:東京都豊島区おなかとおしりのクリニック 東京大塚
院長 端山 軍(MD, PhD Tamuro Hayama)
資格:日本消化器病専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
日本大腸肛門病学会指導医・専門医・評議員
日本外科学会専門医・指導医
日本消化器外科学会専門医・指導医
がん治療認定医
消化器がん外科治療認定医
帝京大学医学部外科学講座非常勤講師
元帝京大学医学部外科学講座准教授
医学博士 など
院長プロフィール