2025年6月12日

健診で「便潜血陽性」と言われると、
大腸がんなのでは? と不安になる方が多いです。
ですが、陽性=大腸がんではありません。
痔・大腸ポリープ・腸の炎症 など、良性の原因で出ることもよくあります。
一方で「便潜血 陽性 1回だけ」「陽性の確率」「放置すると危険?」など
検索が多い疑問の通り、早期がんのサインの可能性 もあります。
早期のポリープや大腸がんは、
大腸内視鏡で切除でき、入院せずに完治を目指せる こともあります。
このページでは、便潜血陽性の原因、1回だけ陽性のリスク、
精密検査(大腸内視鏡)が必要な理由を医師がわかりやすく解説します。

便潜血陽性とは?検査の仕組みと「陽性」の意味
健診で「便潜血陽性」と言われると、多くの方が「がんでは?」と不安になります。しかし、便潜血検査が示すのは“消化管のどこかに微量な血液が付着している可能性”であり、必ずしも重大な病気とは限りません。まずは、この検査が何を調べ、陽性がどのような状態を示すのかを正しく理解することが重要です。
便潜血検査(FIT:免疫学的便潜血検査)は、便の中に混じったヒト血液(ヘモグロビン)を特異的に検出する検査です。
少量の出血でも検出できる(肉眼で見えないレベル)
下部消化管(特に大腸)の出血に反応しやすい
採便2回法で精度が高まる(詳細は便潜血が1回だけ陽性の場合|2回法の意味と受診目安 で解説)
🔍 「陽性」とは何を意味する?
陽性 = 「便の中に血液が混じっている可能性が高い」という意味です。
出血の原因はさまざまで、悪性だけではありません。
📋 よくある原因の区分
※ 原因の詳細は次の項目で解説します
⚠️ 陽性=がんではないが、無視もできない
便潜血陽性の多くは良性疾患によるものですが、早期大腸がんのサインである場合もあります。
そのため、陽性であれば必ず医療機関に相談し、必要に応じて大腸内視鏡検査へ進むことが推奨されます。
📌 受診の流れや内視鏡が必要な理由は
H2-4で詳しく解説 →
便潜血陽性の原因|痔・ポリープ・大腸がんの違い
便潜血が陽性になると「大腸がん?」と心配になりますが、実際には良性の病気が原因であることも多くあります。便潜血陽性の原因は大きく ①良性疾患(痔など)②前がん病変(ポリープ)③がん性病変(大腸がん) の3つに分類できます。それぞれの特徴をわかりやすく整理します。
📋 便潜血陽性の3つの原因
便潜血陽性の原因はさまざまですが、多くは良性の病気によるものです。一方で、一部はポリープや大腸がんなど早期発見が重要な病気が含まれます。ここでは、代表的な原因の違いをわかりやすく整理します。
- 陽性原因として最も多い
- 排便時の痛み・鮮血が特徴
- 肛門近くの出血で検出されやすい
(詳しい受診判断は、次の項目で説明)
- 大腸の粘膜が盛り上がった良性腫瘍
- 小さくても便がこすれ少量出血する
- 一部は時間とともにがん化する可能性あり
- 初期は自覚症状がほぼない
- 表面の微小な出血で陽性になることがある
- 早期で見つかれば内視鏡治療で完治をめざせる

便潜血陽性の結果だけで、上記3つのどれかを正確に判断することはできません。
確定診断には大腸内視鏡検査が必要であり、陽性時の基本方針となります。
便潜血が1回だけ陽性の場合|2回法の意味と受診目安
「1回だけ陽性だったから、様子を見てもいいですか?」という質問は非常に多いですが、これはよくある誤解です。便潜血検査では 1回でも陽性=出血を検出した事実 であり、医学的には“異常あり”と扱われます。ここでは、2回法の意味と「なぜ1回陽性でも精密検査が必須なのか」を明確に説明します。
📝 なぜ便潜血検査は”2回法”なのか
便潜血は、日によって出たり出なかったりする「間欠的な出血」でも陽性になるため、1回の検査だけでは見逃す可能性があります。
2回法が採用される理由- 偶発的な陰性を減らせる(見逃し予防)
- 2回のうち1回でも陽性なら”出血の可能性あり”と判断できる
- がん・ポリープ検出率が1回法より向上
(検査精度の詳細は 便潜血検査の精度|偽陽性・偽陰性とは何かで解説します)
🔍 1回だけ陽性は「軽度の陽性」ではなく“陽性そのもの”
1回陽性=「ごく少量の出血を検出した可能性がある」ということです。
つまり、“陰性よりは明確にリスクが高い”が、”2回陽性よりは低い”という位置づけとなります。
📋 1回だけ陽性は「軽度の陽性」ではなく“陽性そのもの”
便潜血検査は非常に鋭敏で、
ポリープや早期大腸がんのごく少量の出血でも反応します。
そのため、👉 1回陽性と2回陽性は「陽性=要精密検査」という一点で扱いは同じ。
1回だけ陽性だからといって危険性が低いわけではありません。
1回だけでも陽性なら、大腸内視鏡検査は“必須”
医学的に明確な理由
- 出血を検出した事実は変わらない
- 1回陽性でも早期大腸がんが見つかる
- 痔があっても、がんが同時に存在することがある
- 便潜血陽性の原因は内視鏡以外で確定できない
👉 便潜血陽性=精密検査が必須
(1回だけ陽性・2回陽性の区別はない)
これは大腸がん検診の根本原則です。
1回陽性と2回陽性の比較
| 検査結果 | 医学的意味 | 精密検査の必要性 |
|---|---|---|
| 1回陽性 | 出血あり(間欠的な可能性) | 必須 |
| 2回陽性 | 出血が持続している可能性 | 必須 |
→ “陽性”という結果が出た時点で、精密検査は必ず必要です。
便潜血陽性後の受診ステップ|大腸内視鏡が必要な理由
便潜血が陽性になると「まず何をすればいいの?」「本当に内視鏡が必要?」と不安に感じる方が多くいます。便潜血陽性は“何らかの出血を検出した”という確かなサインであり、原因を特定するには大腸内視鏡が欠かせません。ここでは、受診の流れと内視鏡が必要な医学的理由を整理します。
便潜血陽性後の受診ステップ
まずは 消化器内科(大腸内視鏡を実施している医療機関) を受診します。
一般的な流れ
1. 問診
便潜血の結果、症状の有無、家族歴、既往歴を確認
2. 検査説明
内視鏡が必要な理由やリスクを確認
3. 大腸内視鏡検査の予約
前処置(下剤)の説明
4. 当日の検査
ポリープがあればその場で切除できることが多い
→ 検査から治療までその場で完結することが大きなメリット。
なぜ大腸内視鏡が必須なのか
便潜血陽性の原因は、検査だけでは区別できません。
痔・ポリープ・大腸がんなど、“出血の原因”を直接確認できるのは大腸内視鏡検査のみです。
医学的に必要とされる理由
- 大腸の粘膜を直接観察できる唯一の検査
- ポリープをその場で切除=がん予防になる
- 早期がんは内視鏡治療で完治が期待できる
- CT・採血では代用できない(出血原因の確定が不可能)
受診のポイント
| 内容 | 理由 |
|---|---|
| 消化器内科を受診 | 大腸内視鏡検査が必要なため |
| 陽性=必ず精密検査 | 出血の原因の特定は大腸内視鏡検査が有用 |
| 早期発見で治療が完結 | 大腸内視鏡検査と同時に大腸ポリープ切除が可能 |
便潜血陽性は、“大腸内視鏡検査で原因を確認すること”が最も重要です。
専門医への受診方法は後述の よくある質問(Q&A)でも補足します。
便潜血陽性の確率と統計|年齢・性別でどう違う?
便潜血陽性は「どれくらいの割合で起こるのか」「年齢や性別で違いがあるのか」という疑問は非常に多く検索されています。ここでは、国内の大腸がん検診データをもとに、便潜血陽性率と大腸がん発見率の傾向を専門的に整理します。
📊 日本の便潜血検診における陽性率
国内の大腸がん検診(免疫便潜血検査)の陽性率は、年齢・性別によって明確な差があります。
全体の陽性率
- 男性:4〜6%前後
- 女性:3〜5%前後
男性のほうが陽性率がやや高い傾向があります。
📈 年齢と陽性率の関係
便潜血陽性は年齢が上がるほど増加します。特に50歳以降で上昇が目立ちます。
年齢別の陽性率
| 年齢 | 陽性率 | 備考 |
|---|---|---|
| 40代 | 約2〜3% | 発見率は低めだが見逃し厳禁 |
| 50代 | 約4〜6% | 急増する年代 |
| 60代 | 約6〜8% | がん発見率も上昇 |
| 70代 | 約7〜10% | 陽性率・発見率ともに高い |
→ 50代以降は陽性率が2倍以上に上昇。
🔍 陽性から大腸がんが見つかる確率
便潜血陽性者のうち、大腸がんが実際に発見される割合は 約3〜8%(年齢層により変動) と報告されています。
ポリープが見つかる確率
- 腺腫性ポリープ:20〜40%
- 進行腺腫:5〜10%
つまり、便潜血陽性は“何らかの器質的病変が存在する確率が非常に高い”結果 だと言えます。
👥 性別による違い
- 男性のほうが陽性率・腺腫発見率ともに高い
- 特に50歳以降、男性では腺腫性ポリープの頻度が急増
→ 医学的には 男性50歳以上は高リスク層 とされることが多い
ただし、
👉 “陽性である以上、性別・年齢に関係なく精密検査は必須”
という原則は変わりません。
📌 統計が示す重要ポイントまとめ
- 便潜血陽性率は 年齢とともに上昇
- 大腸がん発見率は陽性者の 約3〜8%
- ポリープは 約2〜4割で発見
- 男性は陽性率・病変率が高い
- 陽性=年齢・性別とは無関係に”精密検査の対象”
便潜血陽性の統計は、「陽性=偶然ではない」「放置は危険」 ということを示しています。
この後の H2-6 では、検査精度(偽陽性・偽陰性)の観点からさらに専門的に解説します。
便潜血検査の精度|偽陽性・偽陰性とは何か
便潜血検査(FIT:免疫学的便潜血検査)は、大腸がん検診として世界的に標準化された方法です。しかし、すべての検査には限界があり、便潜血も例外ではありません。「偽陽性」「偽陰性」の意味や検査精度を正しく理解することで、陽性時に内視鏡が“必須”である理由がより明確になります。
🔬 FIT(免疫学的便潜血検査)の仕組みと特徴
FITは、便に含まれる ヒトヘモグロビン を特異的に検出する方法で、下部消化管出血に感度が高いのが特徴です。
FITの長所
- 大腸に特異的(胃・小腸の血液は分解されやすく反応しにくい)
- 1gあたり数μgレベルの微量血液を検出
- 検診規模での大腸がん死亡率減少効果が証明されている
⚠️ 偽陽性(実際は出血がないのに陽性となる状態)
偽陽性は「病変がないのに、便に血液が混じったと判断された結果」です。
主な原因
- 痔・肛門裂傷
- 月経血の混入
- 一時的な大腸炎・感染症
- 採便方法の不備(便を広い範囲でこすりすぎるなど)
注意すべき点
偽陽性の原因がありそうに見えても、
👉 “痔がある=内視鏡を省略できる” は誤り
痔とポリープ・大腸がんが同時に存在することは珍しくありません。
❌ 偽陰性(病変があるのに陰性となる状態)
偽陰性は「出血している病変があるのに、検査が陰性と出る」ケースです。
主な原因
- 間欠的出血(たまたま採便日に出血がなかった)
- 右側結腸(盲腸・上行結腸)の病変
→ 通過時間が長く血液が分解されやすい - 進行がんでも出血が少ない場合
なぜ重要なのか
偽陰性の存在こそ、
👉 “陰性=絶対に安心ではない”
という医療的メッセージの根拠となります。
📊 FITの精度(感度・特異度を整理)
| 指標 | 数値の目安 | 意味 |
|---|---|---|
| 感度 (大腸がんを見つける力) |
約70〜80% | 10人中7〜8人を検出 |
| 特異度 (病変がない人を陰性とする力) |
約90〜95% | 偽陽性が比較的少ない |
| 腺腫性ポリープの 検出感度 |
約20〜40% | 小ポリープは見逃されやすい |
→ FIT単独では限界があり、”陽性=内視鏡が必要”という原則が生まれる。
📌 精度を理解すると見えてくる結論
- FITは大腸がん検診として有効だが、万能ではない
- 陽性は”何らかの出血を検出した確かなサイン”
- 偽陰性が存在するため、症状のある陰性者も要注意
- 診断の確定は大腸内視鏡でしかできない
便潜血検査の限界を理解すると、
「陽性=精密検査必須」
「陰性=絶対安心ではない」
という医学的結論がより明確になります。
次の便潜血陽性を放置するリスク|大腸がん進行と生存率 では、放置した場合のリスクをさらに専門的に解説します。
免疫学的便潜血検査陽性者,陰性者の疾患の特徴Progress of Digestive Endoscopy .63巻 (2003)2号
便潜血陽性を放置するリスク|大腸がん進行と生存率
便潜血陽性であっても「痔だから」「忙しいから」と受診を先延ばしにしてしまう方がいます。しかし、大腸がんは“早期発見できるかどうか”で治療内容も生存率も大きく変わる病気です。ここでは、便潜血陽性を放置することで起こり得る医学的リスクを、進行度・生存率の観点から専門的に整理します。
📊 大腸がんは「進行」とともに治療成績が大きく変わる
大腸がんは進行が進むほど、腸の外へ広がりやすく、治療難度が大きく上昇します。
早期(ステージ0〜I)
- 粘膜内または浅い層にとどまる
- 内視鏡での切除のみで完治が期待できる
進行(ステージII〜III)
- 壁の深部・リンパ節に及ぶ
- 手術+抗がん剤が必要になることが多い
末期(ステージIV)
- 他臓器転移
- 治療は延命目的になることも多い
📈 ステージ別の生存率
| ステージ | 特徴 | 5年生存率 |
|---|---|---|
| 0期・I期 | 早期 | 90〜95%以上 |
| II期 | 軽度進行 | 80〜90% |
| III期 | リンパ節転移あり | 60〜75% |
| IV期 | 遠隔転移あり | 15〜20%前後 |
👉 差が大きすぎるほど明確:早期に見つかるかどうかが生存率を決定する。
⚠️ 便潜血陽性を放置すると何が起きるのか
便潜血陽性は、病変からの“実際の出血”を検出したサインです。
放置すると以下のリスクがあります。
リスク1:がんの進行
- 早期なら内視鏡で取り切れる
- 放置すると数年で進行がんへ移行することがある
リスク2:治療が大がかりになる
- 内視鏡 → 手術 → 抗がん剤へと治療強度が上がる
- 身体的負担・合併症リスクが増加
リスク3:生存率が大きく低下
便潜血陽性の時点で受診していれば救えた症例が、
放置により IV期で見つかる例は実際に報告されている。
📌 結論:陽性を放置するメリットはひとつもない
- 早期がんは症状がほとんど出ない
- 進行してからでは治療が格段に重くなる
- 便潜血が陽性である限り、必ず何らかの原因が存在する
👉 便潜血陽性=必ず精密検査を受けるべき医学的理由がここにある。
当院の大腸内視鏡検査の特徴
豊島区にある「おなかとおしりのクリニック 東京大塚」では、世界水準の内視鏡センターを完備しています。
①消化器内視鏡専門医×AI搭載の最先端大腸内視鏡検査(大腸カメラ検査)
AIによる病変描出システムを用いて消化器内視鏡専門医が最先端の内視鏡検査(胃カメラ検査、大腸カメラ検査)を行います。
AI内視鏡に関しましては、こちらをご参照ください。👉AI併用見逃しゼロを目指す大腸内視鏡検査

②女性に配慮した大腸内視鏡検査
・ご希望に応じて消化器内視鏡専門医である女性医師(火曜日限定)が担当いたします。
・女性専用トイレ、女性専用更衣室を備えています。
・院内にある半個室で下剤を服用することができます。
③苦痛の少ない大腸内視鏡挿入法
軸保持短縮法という患者様の苦痛の少ない挿入技術で、大腸カメラを奥まで(盲腸)挿入いたします。
④鎮静剤を用いた苦痛の少ない大腸内視鏡検査
鎮痛剤、鎮静剤を用いてリラックスした状態で受けられます。大腸内視鏡検査時には、炭酸ガスを用いてお腹の張りを軽減します。
日本大腸肛門病学会 大腸内視鏡について をご参照ください。
大腸がん検診を受けるメリットと内視鏡検査の大切さ
大腸がんは早期に見つければ治療の負担も小さく、予後も良好です。そのため、検診を受ける意義はとても大きいのです。
便潜血検査は、大腸がんを早期に見つける入り口となるスクリーニング検査です。
便潜血陽性の場合は、大腸内視鏡検査(大腸カメラ検査)を受けることで、大腸全体を直接観察し、大腸ポリープや大腸がんを発見してその場で切除することも可能です。
早期発見により、入院や手術、抗がん剤治療などの大きな負担を減らせるのが最大のメリットです。
また、直腸がんを経験された【ラッツ&スターの桑野信義さん】との対談でも、桑野さんご自身が「大腸がん検診の大切さ」を強調されています。
早めに検査を受けることが、ご自身とご家族を守る何よりの手段です。
対談内容はこちらは⇒【桑野信義さん×内視鏡専門医 端山軍】対談
⭐当院が東京都の大腸カメラおすすめの医院に選ばれました。

当院の大腸カメラの特徴および大腸内視鏡検査予約
よくある質問(FAQ)
まとめ|便潜血陽性は「早めに大腸内視鏡検査で確認」が最も安全です
便潜血陽性の多くは怖い病気ではありませんが、中には早期がんやポリープが見つかる大切なサインです。早めの検査が最も負担が少なく、安全な選択肢です。

監修:東京都豊島区おなかとおしりのクリニック 東京大塚
院長 端山 軍(MD, PhD Tamuro Hayama)
資格:日本消化器病専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
日本大腸肛門病学会指導医・専門医・評議員
日本外科学会専門医・指導医
日本消化器外科学会専門医・指導医
癌治療認定医
消化器がん治療認定医
帝京大学医学部外科学講座非常勤講師
元帝京大学医学部外科学講座准教授
医学博士 など
院長プロフィール

