2025年5月30日

〜腸内フローラを整える“腸の味方”〜
最近「腸活」という言葉がブームです。ヨーグルト、発酵食品、サプリメント……中でもよく耳にするのが「乳酸菌製剤」。
「腸にいいって聞いたけど、本当に効果あるの?」「下痢や便秘にも効くってホント?」
今回は、医師の視点から、乳酸菌製剤の効果や選び方について詳しく解説します。
乳酸菌とは?その働きは?
乳酸菌は、糖を分解して乳酸を作り出す善玉菌の一種。
腸内で有害菌(悪玉菌)の増殖を抑え、腸の運動を正常化する働きがあります。
私たちの腸には100兆個以上の腸内細菌が存在しており、その集まりを「腸内フローラ(腸内細菌叢)」と呼びます。
このバランスが崩れると、下痢・便秘・肌荒れ・免疫力低下など、さまざまな不調を引き起こします。
乳酸菌製剤はどう違う?
乳酸菌製剤とは、「腸内フローラを整える目的で処方される医薬品」または「機能性サプリメント」です。
市販の乳酸菌飲料やヨーグルトと違い、効果や安全性が一定の基準で管理されているのが特徴です。
代表的なものには以下のような製剤があります
・ビオフェルミン
・ラックビー
・ミヤBM
違いについては図を参照。
製剤 | 含有乳酸菌 | 特徴 |
---|---|---|
ビオフェルミン |
錠:ビフィズス菌 配合散:ビフィズス菌 R錠・R散:耐制乳酸菌 |
錠・微粒N・配合散 →腸内細菌のバランスの改善 R錠・R散 →抗生物質、化学療法剤投与時の腸内菌叢の異常による諸症状の改善 |
ラックビー |
錠:ビフィズス菌 微粒N:乳酸菌、糖化菌 R散:耐制乳酸菌 |
|
ミヤBM | 宮入菌 (Clostridium butyricum MIYAIRI) |
生きたまま腸まで届いて、健康な腸をサポートする。宮入菌が形成する芽胞は植物の種のようなもので、胃酸や熱、抗生物質などに対して抵抗性を持つことから、宮入菌は大腸まで届いて増殖することが可能。 |
これらは、医療機関でも急性下痢、抗生物質関連下痢、過敏性腸症候群(IBS)などに対して処方されることがあります。
科学的根拠(エビデンス)は?
実際、乳酸菌製剤の効果には多くの研究が存在します。
例:
・あるメタアナリシス(複数の臨床試験を統合した研究)では、乳酸菌製剤が抗生物質による下痢の発生率を約50%低下させたという結果が報告されています(Hempel et al. JAMA,2012 May 9;307(18):1959-69)。
・過敏性腸症候群(IBS)に対する効果も報告されており、症状(腹痛・ガス・下痢など)の軽減に寄与する可能性があります(World J Gastroenterol. 2015 Mar 14;21(10):3072-84)。
市販の乳酸菌と何が違うの?
「ヨーグルトでもいいのでは?」という声もあります。
確かに市販の乳酸菌飲料やヨーグルトにも善玉菌は含まれていますが、医薬品として処方される乳酸菌製剤は“生きて腸に届く力”や“生着性”がより高く設計されていることが多く、効果の信頼性が高いです。
また、医薬品は腸炎や手術後などでも安心して使える点がメリットです。
どんなときに使うべき?
乳酸菌製剤は、こんなときに特に有効です
・急な下痢や腹痛が続くとき
・慢性的な便秘やガスに悩んでいるとき
・過敏性腸症候群(IBS)がある方
・ストレスでお腹の調子が崩れやすい方
医師からのアドバイス
乳酸菌製剤は「薬のようでいて、体にやさしい」腸活アイテム。
副作用はほとんどなく、お腹のバランスを自然に整えるサポートとして非常に優秀です。
ただし、すべての人に同じ製剤が合うとは限りません。効果を感じにくい場合は、菌種を変えたり、腸内環境の総合的な見直し(食事・生活習慣)も必要です。
当院では、乳酸菌製剤の処方も行っています。
「なんとなく調子が悪い」「下痢や便秘を繰り返す」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。