
過敏性腸症候群(IBS)
過敏性腸症候群(IBS)
過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome, IBS)は、腸に炎症や潰瘍などの目に見える異常がないにもかかわらず、慢性的な腹痛やお腹の張り、便通異常(下痢や便秘、またはその両方)を繰り返す疾患です。ストレスなどの心身の状態や生活習慣が深く関わることが知られており、日本人でも非常に多い病気です。日本消化器病学会ガイドライン(2020年改訂版)では、成人の約10~15%にみられると推定されています。
突然の便意と水様便が特徴。
排便困難やコロコロした便。
下痢と便秘を交互に繰り返す。
その他明確に分類できないタイプ。
腹痛を伴う便通異常や膨満感が特徴的な疾患です。
この疾患では、主に以下のような症状がみられます。
・腹痛
・下痢または便秘といった便通異常
・お腹の張り(膨満感)
症状の現れ方により、以下のタイプに分類されます。
・下痢型:突然の激しい腹痛とともに水様便が出ることが多い
・便秘型:鈍く持続的な腹痛と便秘が主な症状
・混合型:下痢と便秘が周期的に入れ替わる
・その他のタイプ:お腹にガスがたまりやすく、腹部の張り、腹鳴(お腹が鳴る)、意図しない放屁などが目立つ
腹痛は排便によって一時的に軽減するのが特徴で、睡眠中に症状が現れることはほとんどありません。
この疾患は、自律神経のバランスの乱れが深く関わっており、ストレスが発症や悪化のきっかけになることがよくあります。
さらに、消化器症状だけでなく以下のような全身症状を伴うこともあります。
・頭痛
・集中力の低下
・疲労感・倦怠感
・不安感や気分の落ち込み(抑うつ)
便通異常や腹痛は、さまざまな消化器疾患に共通する症状です。
そのため、まずは大腸ポリープや炎症、がんなどの器質的な病変がないかを確認することが重要です。これには、**大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)**が欠かせません。病変の有無や状態を直接確認し、必要に応じて組織を採取して病理検査を行うことで、正確な診断につなげます。
もし器質的な異常が見つからなかった場合、過敏性腸症候群(IBS)の可能性が考えられます。
過敏性腸症候群は、大腸カメラ検査や血液検査、画像検査では診断できません。そのため、患者さんの症状の経過や生活習慣、ストレスの有無などを詳しく問診し、医師が総合的に判断します。
過敏性腸症候群(IBS)は、はっきりとした原因がまだ明らかになっていないため、完治を目指す治療法は確立されていません。命に関わる病気ではありませんが、慢性的な腹痛や下痢・便秘といった症状が日常生活に大きな支障をきたすことがあります。そのため、時間をかけて症状を和らげ、上手に付き合っていくことが大切です。
当院では、患者さんの症状の内容や生活スタイル、お困りの場面などを丁寧に伺いながら、一人ひとりに合わせた治療方針を一緒に考えていきます。気になることやご不安があれば、どんな些細なことでもお気軽にご相談ください。
治療は、薬物療法による症状緩和に加え、食事内容の見直しやストレスケアを含めた生活習慣の改善も重要です。つらい症状を少しずつでも和らげ、より快適な日常を取り戻せるよう、医師・スタッフがしっかりとサポートいたします。
生活習慣を見直し、発症や悪化のきっかけとなる要因を少しずつ改善していくことが大切です。
まずは、睡眠不足や慢性的な疲労を解消し、心身のリズムを整えることから始めましょう。過度な飲酒や喫煙、香辛料などの刺激物の摂りすぎは症状を悪化させることがあるため、無理のない範囲で控えることをおすすめします。
ただし、厳しすぎる制限や完璧を求めすぎると、かえってストレスになり、症状を悪化させてしまうこともあります。
まずはできることから、自分のペースで少しずつ生活習慣を整えていくことが、長く続けるコツです。
日常的に運動を取り入れることで、血行や代謝が促進され、腸の動きも整いやすくなります。
必ずしも激しい運動をする必要はありません。無理のない範囲で行えるウォーキングや軽い水泳、ストレッチなどの有酸素運動が効果的です。
「少し歩く」「体を軽く伸ばす」といったことから始めるだけでも、腸内環境の安定やストレス軽減につながる可能性があります。ご自身の体調やライフスタイルに合った方法で、無理なく続けてみましょう。
症状をやわらげ、少しでも早く日常生活を取り戻せるように
当院では、つらい症状を少しでも早く軽くすることを大切に考え、患者さん一人ひとりの症状やお悩みに合わせた治療を行っています。
下痢や便秘には、作用の異なるさまざまなお薬があり、近年は新しいタイプの薬も登場しています。また、漢方薬や乳酸菌・酪酸菌製剤の併用など、体質やお好みに合わせた治療の選択肢もご用意しています。さらに、ストレスや不安が影響している場合には、抗不安薬や抗うつ薬を短期間だけ使用することで、症状が楽になることもあります。
当院では、消化器内科としての専門的な視点から、症状の内容・ライフスタイル・ご希望などを丁寧に伺いながら、無理のない治療方針をご提案します。お薬についての不安や気になることがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
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