2025年10月02日

秋になると出回る甘い柿。健康に良い果物として親しまれていますが、実は「食べすぎ」によって胃の中で“石”のような塊をつくる病気があります。それが 柿胃石(かきいせき) です。めったに起こるものではありませんが、一度できると腹痛や嘔吐、さらには腸閉塞などの重篤な症状を引き起こすこともあります。本稿では、柿胃石のメカニズム、症例報告、さらに「コーラで溶かせる」というユニークな治療法に関する文献を紹介しながら、豊島区「おなかとおしりのクリニック 東京大塚」の院長がわかりやすく解説します。
胃石・柿胃石とは?
胃石(bezoar)とは、胃の中で食物残渣や繊維、薬剤などが凝集し硬い塊となったものを指します。胃石は消化管内で未消化物が凝集してできる固形物で、構成により植物性(phytobezoar)、毛髪性(trichobezoar)、薬剤性(pharmacobezoar)などに分類されます。柿胃石(diospyrobezoar)は渋柿などの摂取が契機となる植物性胃石の一亜型で、柿を過剰に摂取したことによってできる植物性胃石を特に「柿胃石」と呼びます。
柿胃石は日本で比較的多く報告されており、1913年に永富が初めて報告したとされています【永富:日本医科大学雑誌 1913;19(3):452-454】。その後も「柿胃石の2例」(日本医科大学雑誌)など、臨床報告が相次いでいます。
無症状で経過することもありますが、多くは 上腹部痛、食後膨満感、吐き気、嘔吐 を伴い、時に腸閉塞を引き起こす危険性があります。
柿胃石の発生メカニズム
柿胃石形成には以下の要因が関与すると考えられています。
①タンニン酸:柿に多く含まれる渋み成分で、胃酸と結合して不溶性の沈殿を形成し、食物繊維と一緒に凝集します。
②胃の排出遅延:胃切除後や糖尿病性胃不全麻痺など、胃の運動が低下している患者で起こりやすいと報告されています。
③食べ方:空腹時に柿を大量に食べる、よく噛まずに飲み込む、水分を取らないで食べるなどもリスクを高めます。
岡山大学の岩室らは柿胃石の化学成分を分析し、タンニン酸が約98%を占めると報告しています。
参考文献:岩室雅也,他:柿胃石の成分分析における標準物質としての柿渋の有用性.岡山医学会雑誌 126巻2号(2014)p.127–131
胃石/柿胃石の診断
・胃内視鏡検査:不整な表面の暗褐色〜黒色塊。必要に応じ生検/回収。
・CT:内部に気泡を含むモザイク状の腫瘤像。
・成分分析:赤外分光で柿渋スペクトルと近似すれば柿胃石と判断。
胃石の治療アルゴリズム(推奨の全体像)
1. 保存的/化学的溶解
コーラ溶解療法:系統的レビューで、コーラ単独で約50%、内視鏡併用で90%以上の成功率が報告。ただし柿胃石(diospyrobezoar)は溶けにくい(初回成功23%)点に注意。

2. 内視鏡治療
スネア・把持鉗子・ジェット・APC等で破砕・摘出。コーラ直接注入併用で回収できた国内症例も。結石分析では**タンニン98%**を確認。J-STAGE
3. 外科(腹腔鏡を含む)
保存的・内視鏡が奏功しない、腸閉塞・穿孔など合併症が疑われる場合は外科的摘出が第一選択。実際にコーラ療法が無効で手術となった症例が近年も報告されています。
安全上の注意:コーラ療法は医療管理下でのみ実施。自己判断での大量摂取は誤嚥・代謝異常・腸管障害のリスクがあり推奨できません。治療の第一選択は内視鏡であり、腸閉塞の兆候があれば速やかに外科判断へ。
参考文献:S D Ladas, et al. Systematic review: Coca-Cola can effectively dissolve gastric phytobezoars as a first-line treatment. Aliment Pharmacol Ther. 2013 Jan;37(2):169-73. doi: 10.1111/apt.12141.
柿胃石の予防と生活上のポイント
・一度に大量の柿(特に干し柿)を食べない。
・よく噛む・水分を取る。
・胃切除後・糖尿病で胃運動が遅い方は秋〜冬の柿シーズンに注意。
・食後の膨満・痛み・嘔吐が続く場合は、早めに消化器内科を受診。
当院の胃内視鏡(胃カメラ)検査のご案内
秋〜冬は柿をはじめ消化器症状が出やすい季節です。上腹部痛・食後の膨満・吐き気・黒色便・胸やけなどの症状がある方、**柿胃石(diospyrobezoar)**が気になる方は、専門の内視鏡で早めの確認をおすすめします。おなかとおしりのクリニック 東京大塚では、負担を抑えた胃内視鏡を提供しています。

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当院の胃内視鏡検査(胃カメラ)の特徴
・鎮静(静脈麻酔)対応:ウトウト眠っている間に胃内視鏡検査が終了。苦痛の少ない検査を重視。
・AI支援 × 高画質内視鏡:最新プラットフォームを用いた精細観察で、小病変の見逃し低減を目指します。
・安全性を第一に:術前聴取・既往薬確認を徹底し、必要に応じて採血・心電図などを実施。
・アクセス良好:JR山手線「大塚駅」南口徒歩1分/都電「大塚駅前」徒歩1分。池袋・巣鴨から1駅。
豊島区「おなかとおしりのクリニック 東京大塚」のアクセス

よくある質問
Q1. 柿胃石とは何ですか?
A. 柿由来のタンニンが胃内で重合し、食物繊維などと凝集してできる硬い塊(胃石)です。英語では diospyrobezoar と呼ばれ、植物性胃石(phytobezoar)の一種です。
Q2. どんな人が柿胃石になりやすい?
A. 胃の排出が遅れやすい方(胃切除・バイパス術後、糖尿病性胃不全麻痺、高齢)や、干し柿を含む柿を短期間に大量摂取した方はリスクが上がります。
Q3. 柿胃石の主な症状は?
A. 食後膨満、上腹部痛、悪心・嘔吐。症状が強い、便・ガスが出ない、腹部が強く張る場合は腸閉塞の可能性があります。
Q4. 柿胃石どうやって診断する?
A. 胃内視鏡検査(胃カメラ)で直接確認します。CTで内部に気泡を含む塊として描出されることがあります。回収できれば成分分析で確定します。
ご予約・お問い合わせ
・Web予約/お電話に対応。空きがあれば当日ご相談も可能です。
・胃カメラ・大腸カメラの同日実施についてもご相談ください。
・アクセス:東京都豊島区南大塚3-34-7 大塚Carna 2階(大塚駅南口徒歩1分)

監修:東京都豊島区おなかとおしりのクリニック 東京大塚
院長 端山 軍(MD, PhD Tamuro Hayama)
資格:日本消化器病専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
日本大腸肛門病学会指導医・専門医・評議員
日本外科学会専門医・指導医
日本消化器外科学会専門医・指導医
帝京大学医学部外科学講座非常勤講師
元帝京大学医学部外科学講座准教授
医学博士
院長プロフィール