
便潜血陽性を指摘された
便潜血陽性を指摘された
「健康診断で便潜血検査が陽性と出たんですが、これって大丈夫なんでしょうか?」患者様からこういったご相談をいただく事は、実はとても多いんです。
便潜血検査というのは、いわば“お通じの中に見えない血が混じっていないか”をチェックする検査です。目では見えないけれど、ごく微量の血液が混じっていると、検査キットが反応して「陽性」と判定されます。
でも、陽性と聞くと「まさか、がん…?」と不安になってしまいますよね。そこで今回は、便潜血検査が陽性になる事で疑われる病気、そしてその後に必要な対応について、わかりやすくお話ししていきたいと思います。
便潜血検査(正式には「免疫学的便潜血検査」)は、便の中に人間の血液成分(主にヘモグロビン)が含まれていないかを調べる検査です。主に大腸の出血をキャッチするために使われていて、特に大腸がんや大腸ポリープの早期発見に役立っています。
健康診断のメニューの中でも、40歳以上の方には毎年の受診が推奨されている重要な項目のひとつなんですね。
便潜血検査で「陽性」と判定されると、「何か病気があるのでは…?」とご不安になる方も多いかと思います。
実際に、便に目に見えないほどの微量な血液が混じっている場合、それは腸のどこかで出血が起きている可能性があるという事を示しています。では、その出血の原因となっているかもしれない病気には、どんなものがあるのでしょうか?ここで代表的なものをご紹介します。
もっとも多い原因のひとつが、痔核(いぼ痔)や裂肛(切れ痔)などの肛門のトラブルです。
便通時に肛門がこすれて出血し、その血液が便に混じってしまうケースは決して珍しくありません。
ただし、肛門からの出血は便潜血検査の対象外とされている事もあり、継続して陽性になる場合は別の原因も考える必要があります。
大腸ポリープは、大腸の粘膜にできる小さな“できもの”のような存在で、多くは良性ですが、種類やサイズによっては出血の原因となります。
特に腺腫性ポリープは放置するとがん化するリスクがあるため、便潜血陽性の原因として見過ごせません。
便潜血検査が最も重要な目的としているのが、大腸がんの早期発見です。
大腸がんは初期の段階ではほとんど症状が出ないため、無症状でも潜血によって発見されるケースが多いのです。
がんの表面がこすれて出血し、それが便に混じって反応が出る場合があります。
潰瘍性大腸炎やクローン病など、腸の粘膜に慢性的な炎症や潰瘍ができる病気でも、便潜血が陽性になる事があります。
これらの病気は、慢性的な下痢や腹痛、血便などの症状を伴う事が多いのが特徴です。
一時的な腸の炎症、たとえば細菌感染による腸炎や、血流が悪くなって腸がダメージを受ける虚血性大腸炎でも、腸の粘膜が荒れて出血する事があります。
これらは急激な腹痛や下痢、発熱を伴う事が多いので、体調の変化とともに便潜血陽性が出た場合には、こうした病気も疑われます。
便潜血検査が陽性になったからといって、すぐに大腸がんが見つかるわけではありません。実際、多くの方が「痔」や「一過性の腸の不調」などが原因である事もあります。
しかし、その中に重大な疾患が潜んでいる可能性がある事も事実です。特に、繰り返し陽性になる場合や、過去にポリープを指摘された事がある方、家族に大腸がんの既往歴がある方などは、精密検査を受ける事で早期の発見・予防が可能になります。
実は、便潜血検査で陽性になった方の多くは、まったく症状がないというのが現実です。
お腹の痛みもない、下痢も便秘もない、体調も悪くない…。そんな中で、健康診断で突然「陽性です」と言われ、戸惑う方はとても多いのです。けれど、これこそが便潜血検査の重要な役割なのです。
自覚症状が現れる前に、体の中で起こっている“小さな異常”をキャッチする事ができる。まさに早期発見のツールなのです。
とくに大腸がんは、ある程度進行するまで症状が出にくい病気です。「症状がないから安心」ではなく、「症状がないからこそ検査をしなければならない」、これが便潜血検査陽性時の大切な考え方です。
大腸ポリープとは、大腸の内側(粘膜)にできる隆起状の組織の事を指します。一口にポリープといっても、その種類や性質はさまざまですが、特に注意したいのが「腺腫(せんしゅ)」と呼ばれるタイプです。
腺腫性ポリープは、放置していると年単位で徐々にがん化する可能性があるとされています。
つまり、「今は良性の腺腫ポリープであっても、数年後には大腸がんになっているかもしれない」というわけです。がん化の過程は、「腺腫 → 増殖性腺腫 → 早期がん → 進行がん」と進行していくと考えられています。
逆に言えば、腺腫の段階で発見して除去すれば、大腸がんは“予防できるがん”になるという事なのです。
だからこそ、便潜血検査で陽性となった方は、自分の腸の中にポリープがあるかどうかを調べる事が重要なのです。
便潜血検査は、あくまで「出血の有無をチェックするスクリーニング検査」です。つまり、「何かあるかも?」と知らせてくれるだけの、入り口の検査なんです。
本当に問題があるかどうか、どこからの出血なのか、どの程度のものなのかを調べるには、内視鏡検査(大腸カメラ)が必要不可欠です。
内視鏡検査では、肛門からカメラを挿入して大腸の中を直接観察する事ができます。ポリープがあればその場で切除する事もできるため、診断と治療を同時に行えるという大きなメリットがあります。
最近の内視鏡検査は技術も進化していて、以前のような「苦しい」「恥ずかしい」といったイメージもずいぶんと和らいできました。鎮静剤を使用して、眠っている間に検査を終える事も可能ですので、安心して受けられるようになっています。
大腸がんやポリープの背景には、食生活や運動習慣、ストレス、喫煙・飲酒などの生活習慣が深く関係しています。つまり、これらの病気は「生活習慣病の一種」と言われる事もあります。
脂っこい食事や野菜不足、加工肉の摂取、運動不足などが腸内環境に影響し、長年の生活の積み重ねががんやポリープの原因になっている事も多いのです。
便潜血検査で陽性となったのは、もしかすると生活習慣を見直すサインかもしれません。大腸カメラによる検査を受けると同時に、日々の生活を振り返るきっかけにもしていただけると嬉しいです。
普段の食事は、腸の健康に大きな影響を与えます。
こういった食材は、腸内環境を整えるのにとても役立ちます。逆に、動物性脂肪の多い肉類やファストフード、甘いお菓子、アルコールの摂りすぎは腸に負担をかける可能性があります。
便潜血陽性という結果をきっかけに、食生活の改善にも少しずつ目を向けてみてくださいね。
便潜血検査で陽性が出た場合、「症状がないから大丈夫」と思わず、まずは内視鏡検査(大腸カメラ)でしっかりと調べる事が何よりも大切です。
こうした方は、将来的なリスクを減らすためにも、一度しっかりと検査を受ける事をおすすめします。
大腸がんは早期に発見できれば、ほとんどの場合で完治が可能です。そのためにも、「便潜血陽性」は見逃してはいけないサイン。私たちが、皆様が安心して検査を受けられるよう全力でサポートいたします。
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