2025年7月01日

「栄養」と「炎症」は論文の宝庫!
栄養や炎症の状態を評価する指標(スコア)は、日常診療にとどまらず、論文や学会発表のネタとしても非常に優秀です。
近年では、CONUTスコアや**GNRI(Geriatric Nutritional Risk Index)**のような“栄養指標”に加え、
**SIRI(Systemic Inflammation Response Index)やSII(Systemic Immune-Inflammation Index)**といった“炎症×栄養指標”も活用されるようになっています。
当院医師による英語論文(PubMed Central掲載)
当院院長は、以下のような栄養・炎症指標を用いた研究論文を英語で発表し、国際的にも評価されています:
①CONUTスコアによる大腸がん術後患者の転帰予測
The pretreatment Controlling Nutritional Status (CONUT) score is an independent prognostic factor in patients undergoing resection for colorectal cancer
Sci Rep. 2020 Aug 6;10(1):13239. doi: 10.1038/s41598-020-70252-2.

②GNRIを用いたがん特異的生存率の評価
The preoperative geriatric nutritional risk index (GNRI) is an independent prognostic factor in elderly patients underwent curative resection for colorectal cancer
Sci Rep. 2022 Mar 7;12(1):3682. doi: 10.1038/s41598-022-07540-6.

ROCの比較をすると論文は、acceptされやすいです。
③遺伝子変異(KRAS)×炎症×栄養スコアの3軸解析
Predicting prognosis in colorectal cancer patients with curative resection using albumin, lymphocyte count and RAS mutations
Sci Rep. 2024 Jun 23;14(1):14428. doi: 10.1038/s41598-024-65457-8.

今回の、論文はTime-dependent ROC curvesの比較したグラフを挿入しました。
これらは、臨床医でも現場データをもとに論文が書けることの好例です。
🔍 栄養・炎症指標の代表例
以下に、論文化・学会発表に使いやすいスコアをご紹介します。
CONUTスコア Controlling Nutrition Status
・スコアに使用する項目は、アルブミン・リンパ球数・コレステロールの3項目
・栄養状態と免疫力を同時に評価可能
・がん患者の予後評価に有用

GNRI(高齢者栄養リスク指標)Geriatric Nutritional Risk Index
・アルブミンと体重から算出
・GNRIが、98以上:低リスク/92未満:高リスク
・フレイルやがん予後に強く関与

mGPS(modified Glasgow Prognostic Score)
・アルブミンとCRP(炎症)を用いてスコア化
・炎症性疾患や悪性腫瘍の予後に関与
CALLY Index
・Alb × リンパ球数 ÷ CRP
・栄養・免疫・炎症の統合スコア
・がん患者や術前リスク評価に使える比較的新しいスコア
SIRI(Systemic Inflammation Response Index)
・SIRI=好中球 × 単球 ÷ リンパ球
・炎症と免疫のバランスを可視化
SII(Systemic Immune-Inflammation Index)
・SII=血小板 × 好中球 ÷ リンパ球
・がん、心血管疾患、術後合併症などのリスク予測に有用
Naples Prognostic Score(NPS)ナポリ栄養スコア
・がん患者の予後予測や栄養・炎症状態の評価に用いられる複合的なスコア
・特に**消化器がん(胃がん・大腸がん・膵がんなど)**での研究報告が多く、予後予測因子として注目

🧬 遺伝子×炎症×栄養:次世代の評価軸へ
最新の当院研究(PMC11194255)では、
KRASの遺伝子変異と、炎症・栄養スコアの関連性を解析しました。
✅ 遺伝子変異によってSIRIやCONUTスコアに有意差あり
✅ 同じがん患者でも、体質と栄養状態で予後が大きく変化
✅ 「遺伝子 × 栄養 × 炎症」の3軸でのリスク評価が有効
このような“多因子統合評価”は、今後の**大腸がん術後の予後評価**のカギを握ります。
🏥 当院の実践
当院(東京都豊島区・大塚駅徒歩1分)では、胃カメラ・大腸カメラなどの内視鏡検査と併せて、必要に応じて栄養・炎症スコアによる全身評価を行っています。検査前のリスク評価や予後予測だけでなく、栄養相談や治療方針決定にも活用しています。
まとめ
論文は特別な人だけが書けるものではありません。
日々の診療の中にある“数値”や“観察”を、スコアで可視化すれば、立派な研究テーマになります。
CONUTやGNRI、SIRI、SIIといった指標は、臨床医でも扱いやすく、再現性が高いのが特徴です。
遺伝子や免疫、炎症の視点を組み合わせれば、より深く、より価値のある発信が可能になります。
今後の診療や研究のヒントとして、ぜひ活用してみてください。