2025年7月05日

結論から
筋トレそのものが痔を直接作るわけではありません。
でも、高負荷のトレーニングや呼吸法による強い腹圧は、痔を悪化させるリスク要因になります。
つまり、「筋トレのやり方次第」で痔になるリスクは確実に変わります。
そもそも痔って何?
「痔核」は、肛門の血管(静脈叢)がうっ血してコブのように腫れる病気です。
主な原因は以下です。
・排便時の強いいきみ
・便秘や下痢
・長時間の座り姿勢
・加齢による支持組織の弱化
要するに「おしりに負担がかかる習慣」が痔を育てます。

筋トレで痔が悪化する理由
筋トレは健康的な習慣ですが、次のようなポイントが痔のリスクを上げます。

① バルサルバ法による強烈な腹圧
高重量スクワットやデッドリフトでは、息を止めて腹圧を高める「バルサルバ法」を使う人が多いです。
この強い腹圧は肛門静脈の圧力も一気に上げてしまい、内痔核の原因になります。
② 高重量トレーニング
重量を追い求めてフォームを崩すと、必要以上に腹圧をかけてしまい肛門に負担。
「重いものを持つ仕事の人に痔が多い」という古典的な臨床観察とも一致します。
③ 便秘リスク
・筋トレ愛好者に多い高タンパク低食物繊維食
・水分不足
・プロテイン摂取で便秘になる人
便秘はいきみを強め、痔を育てる大きな要因です。
④ 長時間座位や踏ん張り姿勢
・パワーリフティングでの踏ん張り姿勢
・休憩時間の座りっぱなし
血流うっ滞も痔の誘因になります。
文献的根拠もある
腹圧と痔に関する研究があります。

医学研究でも以下のように指摘されています。
①「腹圧上昇は肛門静脈の圧力を増加させ、痔核形成を促進する要因」
(Lohsiriwat V. World J Gastroenterol 2012)
②「便秘は痔の重要なリスク因子」(Riss S, Int J Colorectal Dis 2012)
筋トレに特化した疫学研究は少ないですが、腹圧上昇・便秘・血流障害という病態は共通です。
予防法
筋トレを続けながら痔を防ぐためには以下のポイントを意識しましょう。
・重量設定を見直す
・バルサルバ法を多用しない(息を止めすぎない)
・正しい呼吸法・フォームを学ぶ
・水分をしっかり取る
・食物繊維を十分摂る
・便秘になったら胃腸科や肛門科を直ぐに受診
医師からひとこと
筋トレは心身の健康に非常に良い習慣です。
「痔が怖いから筋トレをやめる」という必要は全くありません。
ただし「正しいフォーム」「腹圧管理」「食事内容」に気を配るだけで、肛門への負担は大幅に減らせます。
まとめ
・筋トレ=痔になる、は誤解。
・でも「腹圧管理を怠る筋トレ=痔リスクUP」は事実。
正しい知識と習慣で
✅ 強い身体
✅ 健康なおしり
を同時に手に入れましょう!
参考文献
①Lohsiriwat V. Hemorrhoids: From basic pathophysiology to clinical management. World J Gastroenterol 2012; 18(17): 2009–2017.
②Riss S, et al. The prevalence of hemorrhoids in adults. Int J Colorectal Dis 2012; 27(2): 215–220.
③Sardinha TC et al. Risk factors for hemorrhoidal disease: An updated review. World J Gastrointest Pharmacol Ther 2023.
監修:豊島区 おなかとおしりのクリニック 東京大塚