2025年7月19日

「ラーメンを食べると、なぜか毎回トイレに直行してしまう…」そんな経験はありませんか?実はラーメンには、腸に負担をかける“見えない原因”がいくつも潜んでいます。脂っこいスープや香辛料だけでなく、麺に必ず含まれる「かんすい」や、トッピングの選び方も腸の不調につながることがあります。本記事では、医師の視点からラーメンと下痢の関係をわかりやすく解説し、種類別のリスクと対策も紹介します。

ラーメンで下痢になる3つの主な原因
ラーメンを食べた後に下痢を引き起こす原因は一つではありません。ここでは、ラーメンに共通して含まれる成分や特徴が、どのように腸に影響を与えるのかを医学的に整理し、それぞれのメカニズムと対処法を紹介します。
① かんすいによる腸への刺激

● かんすいとは?
かんすいは、ラーメン特有の“コシ・黄色み・風味”を生み出すために使われる特別な水です。中には「炭酸ナトリウム」「炭酸カリウム」などの成分が溶け込んでおり、麺を弾力ある仕上がりにします。日本の中華麺にはほぼすべて含まれており、ラーメンの味や食感を決定づける重要な存在です。
● なぜ腸に悪さをするのか?
強いアルカリ性の成分が、胃や腸の粘膜に刺激を与えることがある
pHバランスが乱れ、腸の運動が過敏になる
IBS(過敏性腸症候群)の人では、かんすいの微細な刺激でも腹痛や下痢を引き起こすことがあります
「バリカタ」などの硬め麺では、かんすいの成分が麺内に残りやすく、消化不良の原因にも
● 酸味で中和できる?
レモンや酢などの酸性食品を一緒に摂ると「中和される」と言われることもありますが、医学的には明確な効果は証明されていません。
効果があるとしても、「胃での刺激がまろやかに感じる」程度です。
② 脂肪性下痢:こってりスープに注意
● 原因と仕組み
豚骨や鶏白湯、味噌ラーメンには脂質が多く含まれており、小腸で処理しきれない脂肪が大腸に流れ込むと、水分を引き込んで下痢になります。胆汁や膵液の分泌が弱いと脂肪の消化が間に合わず、脂肪性下痢を引き起こしやすくなります。
● 対策
・スープの完飲は控える
・「油少なめ」の注文が可能なら活用
・脂っこいトッピング(背脂、チャーシュー多め)は控えめに
③ 香辛料・にんにくなどの刺激物

● 唐辛子(カプサイシン)・山椒・にんにくなど
これらは腸の粘膜を直接刺激し、過剰な腸の収縮(蠕動運動)を起こして下痢を引き起こすことがあります。
特にIBSの人では、香辛料や刺激物に強く反応し、腹痛やガス、便通異常が悪化することがあります。
● スープやタレに含まれている場合も
にんにく油や辛味噌、ラー油など、スープの中に溶け込んでいる刺激物にも注意が必要です。
医療コラム 「辛い物を食べたらおしりが痛い?専門医が原因(カプサイシン)と対策をやさしく解説」をご参照ください。
ラーメンの種類別|下痢リスクと対策
ラーメンと一口に言っても、そのスープの種類やトッピングによって腸への負担は大きく異なります。ここでは、代表的なラーメンの種類ごとに、下痢を引き起こしやすいリスク要因と、それを軽減するための具体的な対策をご紹介します。
豚骨ラーメン
豚骨ラーメンは高脂肪・高濃度のスープが特徴で、消化に時間がかかるため、胃腸が弱っていると下痢や腹痛の原因になることがあります。

リスク: 高脂肪スープ+にんにく+硬め麺で腸への負担大
対策:
・麺はやわらかめで注文すると、消化しやすくかんすいの刺激も緩和されます
・にんにくは控えめに
・スープの完飲は避けましょう
味噌ラーメン
味噌ラーメンは脂質や塩分が多く、刺激が強いため、胃腸が弱っていると下痢を引き起こすことがあります。

リスク: 味噌自体は発酵食品ですが、炒め野菜+にんにく+ネギの組み合わせで脂質・塩分・FODMAPが増加し、腸に負担をかけます
対策:
・もやしやキャベツなどの野菜を先に食べると、スープや脂の刺激を和らげ、胃腸の働きを整えやすくなります
・ネギは高FODMAP食材(フルクタン含有)で、腸内発酵を促進してガス・下痢を起こしやすいため、IBSの方は抜きがおすすめ
醤油ラーメン
醤油ラーメンは比較的あっさりしていますが、かんすいや塩分、油分が腸を刺激し、体調や食べ合わせによっては下痢を引き起こすことがあります。

リスク: あっさり見えても、ネギやメンマ、チャーシューに塩分・脂質・FODMAPが
対策:
・卵(ゆで卵・味玉)は良質なたんぱく質で消化に優しく、腸への刺激が少ない
・海苔も適量であれば腸にやさしいトッピング
ネギについての詳細は味噌ラーメンの項目をご参照ください
塩ラーメン
塩ラーメンは比較的あっさりしていますが、スープの塩分やかんすい入りの麺が腸を刺激し、体調によっては下痢を招くことがあります。

リスク: 透明なスープに見えても塩分が濃く、香味油が多めなことも
対策:
・レモンやすだちなど、酸味トッピングがある場合は活用し、口当たりを和らげる
・油少なめ・トッピング少なめの選択を
激辛・台湾ラーメン
台湾ラーメンは唐辛子などの強い香辛料が多く含まれ、腸を刺激するため、辛味に弱い人や胃腸が敏感な人では下痢を起こしやすくなります。

リスク: 唐辛子・にんにく・山椒などの強刺激が満載。IBSや痔疾患のある人では注意
対策:
・食前に牛乳やヨーグルトなどで胃粘膜を保護
・辛さ控えめで注文し、スープは控える
鶏白湯ラーメン
リスク: 見た目はやさしいが、乳化された脂質が多く脂肪性下痢の原因になりやすい
対策:
・油少なめ、あっさり系の白湯を選ぶ
・にんにくやネギを減らし、野菜をトッピングして腸にやさしい構成に
IBS(過敏性腸症候群)の方は特に注意
過敏性腸症候群(IBS)の方にとって、ラーメンはさまざまなトリガー(引き金)が詰まったメニューです。症状が悪化しやすい理由と、IBSの方が特に注意すべき食材や成分について解説します。
ラーメンがIBSを悪化させる理由
・脂肪・香辛料・かんすい・塩分・高FODMAPなど、刺激の多い要素が詰まっている
・少量でも反応してしまう腸の方は、食後すぐに腹痛や下痢が出ることも
そもそもFODMAPとは?|腸が敏感な人が避けたい成分群
「FODMAP(フォドマップ)」とは、発酵性の糖質群のこと。以下のような成分が該当します:
Fermentable(発酵性)
Oligosaccharides(オリゴ糖:例:フルクタン、ガラクトオリゴ糖)
Disaccharides(二糖類:例:乳糖)
Monosaccharides(単糖類:例:果糖)
And
Polyols(ポリオール類:例:ソルビトール、マンニトール)
これらは小腸で吸収されにくく、大腸で発酵してガスを生じたり、水分を引き込んで下痢を引き起こすことがあります。IBSの方では特に注意が必要です。
FODMAPとラーメンの関係
成分 | FODMAP分類 | 含まれる食品 |
---|---|---|
フルクタン | オリゴ糖 | ネギ、玉ねぎ、にんく、もやし |
乳糖 | 二糖類 | チーズトッピング |
果糖 | 単糖類 | 一部のたれや味付け |
ポリオール | ポリオール類 | 甘味料 |
・小麦(麺)、にんにく、玉ねぎ、ネギは高FODMAP食品
・IBSの方は、これらを避ける/量を調整することで症状の悪化を防ぐことができます
IBSに関しましては、日本消化器病学会 過敏性腸症候群(IBS)をご参照ください。
下痢が続く場合は医療機関で大腸カメラ検査を
ラーメンを食べたあとに毎回下痢が起こるようであれば、単なる「体質」や「食べ過ぎ」ではない可能性も。慢性的な下痢の背景には、病気が潜んでいることがあります。
繰り返す下痢は病気のサインかも
単なる食べ過ぎや体質ではなく、吸収不良症候群、IBD(潰瘍性大腸炎・クローン病)、大腸がん、感染症などが隠れている可能性もあります。
当院での大腸カメラ検査体制
豊島区「おなかとおしりのクリニック 東京大塚」では、AIを用いたリアルタイム病変検出システム+内視鏡専門医によるダブルチェックによる高精度な大腸内視鏡検査を行っております。
・鎮静剤使用による苦しくない検査
・火曜は女性医師による診察あり、女性専用更衣室・トイレも完備
・JR大塚駅徒歩1分とアクセス良好(巣鴨、池袋、板橋区、文京区)
【まとめ】ラーメンとの付き合い方を工夫すれば、腸も喜ぶ
ラーメンによる下痢には、脂質・香辛料・かんすい・FODMAPなどが複雑に関係しています。
麺の硬さやトッピング、食べ方の順番、注文時のひと工夫で、腸への負担をぐっと減らすことができます。
お腹が弱い人でも、工夫次第でラーメンを安全に楽しむことが可能です。もし、症状が続くようであれば無理せず医師に相談してください。

監修:豊島区おなかとおしりのクリニック 東京大塚
院長 端山 軍(MD, PhD Tamuro Hayama)
資格:日本消化器病専門医・指導医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
日本大腸肛門病学会指導医・専門医・評議員
日本外科学会専門医・指導医
日本消化器外科学会専門医・指導医
帝京大学医学部外科学講座非常勤講師
元帝京大学医学部外科学講座准教授
医学博士