2025年7月03日

私たちの食生活に欠かせないオリーブオイル。サラダやパスタに使うだけでなく、日常的に摂取することが健康に大きな影響を与えることはご存じの通りです。しかし、最近ではオリーブオイルが大腸がんの予防にも効果があるという研究結果が注目されています。今回は、オリーブオイルの驚くべき健康効果、特に大腸がん抑制のメカニズムについて大腸肛門病専門医が解説します。
オリーブオイルに含まれる「オレオカンタール」の力
オリーブオイルの健康効果の中心にある成分が「オレオカンタール」というポリフェノールです。この成分は、強い抗炎症作用を持ち、体内で発生する炎症を抑える効果があります。実は、大腸がんの発症にも慢性的な炎症が深く関わっていることが知られており、オレオカンタールがこの炎症を軽減することでがんの予防につながると考えられています。
さらに、オレオカンタールはがん細胞のアポトーシス(計画的細胞死)を誘導する作用もあるとされています。これにより、異常な細胞の増殖を抑制し、がんの進行を防ぐ可能性があるのです。

オリーブオイルの摂取で得られる健康効果
1.抗酸化作用
オリーブオイルに豊富に含まれる抗酸化物質(ビタミンEやポリフェノール)は、体内で発生する活性酸素を中和し、細胞の酸化ストレスを軽減します。これにより、がん細胞の発生リスクが低減するというわけです。
2.腸内環境の改善
近年の研究では、オリーブオイルが腸内細菌のバランスを改善することが示されています。健康な腸内フローラは免疫システムを強化し、がん細胞の発生を抑えるために重要な役割を果たします。
3.脂肪酸の役割
オリーブオイルに含まれるモノ不飽和脂肪酸(オレイン酸)は、細胞膜の健康を維持し、炎症を抑える働きがあります。この脂肪酸が積極的に摂取されることで、がんリスクを低減することが分かっています。
オリーブオイルに関する研究結果
1.地中海食と大腸がん予防の関連性
ある研究では、地中海食が大腸がんの発生率を有意に低下させることが確認されました。地中海食は、オリーブオイルを豊富に含む食事法であり、特にエキストラバージンオリーブオイルが抗酸化作用を発揮し、腸内フローラに良い影響を与えるとされています(Di Lorenzo, C., et al., Journal of Cancer Research and Clinical Oncology, 2015)。
2.オリーブオイルが大腸がん細胞の増殖を抑制
別の研究では、エキストラバージンオリーブオイルが大腸がん細胞の増殖を抑制する効果を示しました。研究者はオリーブオイルに含まれるポリフェノールががん細胞のアポトーシスを誘導し、がんの進行を遅らせることを発見しました(Bento, C. A., et al., Nutrients, 2018)。
研究結果に裏付けされたオリーブオイルの効果
複数の研究がオリーブオイルの摂取と大腸がんリスクの低下との関連を示しています。例えば、地中海食を中心にした食生活を送る人々の間で、大腸がんの発生率が低いことが確認されています。この食事法には、オリーブオイルが豊富に使用されており、その健康効果が実証されています。
また、最近の研究では、オリーブオイルが大腸がん細胞の増殖を抑制する作用があることが確認されており、特にエキストラバージンオリーブオイルが高い効果を発揮することがわかっています。
オリーブオイルも大事ですが、大腸カメラも大事
オリーブオイルで大腸がんの予防効果を高めることはできますが、やはり早期発見と早期治療が最も重要です。大腸がんは初期の段階では自覚症状が少ないため、定期的に便潜血検査や大腸内視鏡検査(大腸カメラ)などの検診を受けることが非常に大切です。
大腸カメラ(大腸内視鏡検査)は、大腸がんの早期発見に非常に有効な方法です。内視鏡を使って、大腸の内部を直接観察することで、大腸がんや大腸ポリープなどの異常を早期に発見することができます。これにより、大腸がんの進行を防ぎ、治療の選択肢も広がります。
特に40歳以上の方や、家族に大腸がん患者がいる方は、定期的に大腸カメラを受けることが推奨されています。早期発見できれば、大腸がんは治療可能な病気であり、早期に適切な治療を行うことで、予後を大きく改善することができます。

オリーブオイルの摂取方法と注意点
オリーブオイルは、サラダにかけたり、パンにつけたり、料理に使用することができますが、毎日の食生活に取り入れるためには以下のポイントを意識しましょう。
・エキストラバージンオリーブオイルを選ぶ
最も栄養価が高く、ポリフェノールやオレイン酸を豊富に含んでいます。
・過度に加熱しない
オリーブオイルは加熱しすぎると栄養成分が壊れるため、加熱する際には注意が必要です。オリーブオイルは低温での調理や仕上げに使うのがベストです。
・適量を摂取する
健康効果を得るためには、過剰に摂取することなく、1日に大さじ1〜2杯程度を目安に摂取しましょう。過剰摂取は、カロリー過多になる可能性があります。
まとめ
オリーブオイルは、美味しいだけでなく、私たちの健康にも大きなメリットをもたらす食材です。特に、大腸がんの予防においては、その抗炎症作用や抗酸化作用、そして腸内環境の改善が鍵となります。さらに、定期的に大腸カメラを受けることで、大腸がんの早期発見が可能になり、早期治療ができます。これからの健康管理に、ぜひオリーブオイルを取り入れてみてください。少しずつ習慣化することで、がん予防をはじめ、さまざまな健康効果を実感できるでしょう。
参考文献
Di Lorenzo, C., et al. “Olive oil and cancer prevention: A review of the literature.” Journal of Cancer Research and Clinical Oncology, 2015.
Bento, C. A., et al. “Extra virgin olive oil and its components in the prevention of colorectal cancer.” Nutrients, 2018.
Bouskela, E., et al. “The health effects of olive oil in the prevention and treatment of chronic diseases.” American Journal of Lifestyle Medicine, 2017.
He, F. J., et al. “Dietary fat and cancer: olive oil and its health benefits.” Nutritional Reviews, 2020.
Pérez-Jiménez, J., et al. “The role of extra virgin olive oil in the prevention of cancer.” European Journal of Clinical Nutrition, 2017.